ブレーンワールド(その4i)
マネージャーの問いかけへの答をねるは考え込む。
ああ、迷うな。でも、恐れはしない。もっと大きな決断をすでに私はしているのだから。
ひらがなメンバーと離れ離れになるのは絶対にできないけど、一人ひとりのメンバーにスポットが当たるためには私がいないほうがいいような気もするしなあ。
「ねえ、みんな聞いて。ひらがなけやき坂を離脱したり、あるいは芸能界に残らない人が出てきても、私たちはいつまでも仲間だよね。
嬉しいときも悲しいときも、近くにいても遠くにいても、ずっと友達でいましょう」
ねるの唐突な呼びかけに他のメンバー全員は一瞬あっけにとられるが、すぐに誰もが同意し、全員が温かい気持ちになる。
ライブが始まり、欅坂46の歌の後、けやき坂16の「ひらがなけやき」「僕たちは付き合っている」が続いて、
また、欅坂46の歌が続き、ねるのソロ曲「また会ってください」が続く。
ねるには休みがない。
ソロ曲が始まると、サイリウムの色がねる個人のシンボルカラーである紫色に一斉に変わる。
そこにねるは幻影を見る。ああこれが私の希望の光だったんだ。
歌い終えると、万雷の拍手が鳴り響く。
歓喜と熱気がねるの身体を満たしていく。
万感の思いがねるの脳裏に去来する。とめどなく溢れては流れ出ていく。その思いは汲めども汲めども尽きない。
この先、何もまだ決めていないし、何が待ち受けているのかも分からない。でも、今はアイドルであることをとにかく心の底から楽しもう!(了)