・混迷を極めた末に迎えた7月23日の本番
小山田が担当した冒頭の4分間は別の曲に置き換えられたが、小林のカラーは随所に残っていた。劇団ひとりのコントやなだぎ武によるテレビクルーの寸劇がそれ。
入場行進では「ドラゴンクエスト」など世界的に有名なゲームの楽曲が19曲流れた。だが、6月16日付の台本には本番で流れなかった5曲の曲名が記されている。「ゼルダの伝説」のメインテーマや「スーパーマリオブラザーズ」のスーパーマリオ組曲、「ポケットモンスター」のオープニング…共通点は「任天堂ソング」。
「MIKIKOチームは競技紹介を任天堂に監修してもらい代表取締役の宮本も自ら本社のある京都から毎週のように上京し会議を重ねていた。しかし佐々木に実権が移った後、彼は競技紹介をあっさりピクトグラムに変えた。任天堂側も複雑な思いがあるのでしょう。結局、本番直前で任天堂の曲は全て外された」

・多くの国民が驚いたドローン演出
「あれはMIKIKO体制の時にテクニカルチームが苦労して作り上げた演出の”パクリ”。それを今の演出チームは断りも無く流用している」
「MIKIKOチームはインテルのドローンチームと打ち合わせし会場でのプロジェクションやAR(拡張現実)と連動する演出を考えていた。それを本番ではドローン演出だけ”つまみ食い”した」

・様々な案が浮かんでは消え、アイデアがつまみ食いされ、クリエイターたちが傷ついていく中で、最後まで残ったのは小池都知事の火消しと森元会長の海老蔵。2つの”政治案件”だった。

・「大坂なおみの最終聖火ランナーも今年の2月までは王長嶋松井の3名でした。松井は彼の後援会名誉会長の森が強く主張した。ところが森が”女性蔑視”発言で組織委の会長を辞任したことで状況は一変。今度はIOCが掲げる『多様性と調和』を体現する存在として大坂に白羽の矢が立った。本人に打診したのは森の辞任から間もない3月です」

・IOCが拒否した「復興五輪」
「IOCは以前から演出側に『世界で困ってるのは東北だけではない。特定の震災を限定的に取り上げるのはダメ』と伝えていた」
一方でIOCが挿入を強く求めてきた点もあった。
「開会式のストーリー展開を寸断するように流れた『Imagine』はIOCの強いリクエスト。18年の平昌五輪の時にIOC側が『今後はImagineを必ず開会式で流したい』と言い出した」
結果、最後までIOCや政治家、電通の要望ばかりが優先された開会式に。