(日本の水素ステーションで販売されているような)グレー水素では、CO2排出量が11.4kg-CO2eq/kg-H2となり 、低炭素水素の基準値に全く適合しない。

欧州、米国を始め、世界各国の脱炭素化戦略の共通解となってきたのは、まず自然エネルギーを中心とした電源の完全な脱炭素化を実現することであり、更に太陽光発電、風力発電の飛躍的な拡大と送電網の増強を進めながら、余剰電力も含めた、豊富で安価な自然エネルギー電力による水素製造を行い、これを産業・運輸部門の脱炭素化に活用していくという道筋である。

 日本の水素戦略は、こうした脱炭素社会への移行戦略を欠いたまま、日本国内で先行していた水素利用製品の拡大を含め、あらゆる分野での水素需要量を積み上げ、これに相当する水素の供給を、少なくとも2030年までは炭素性能(排出量)に関わりなく、海外からの調達を中心に進めるという構造になっている。水素の利用についても供給についても、化石燃料を調達し利用してきた、既存の設備とシステム、産業構造を維持したいという狙いが見え隠れしている。