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読了した。以下糞長いあらすじ

冷戦のまっただなか、粛清の嵐が吹き荒れる50年〜60年代のソ連を舞台に
妖艶で邪悪な妖精「クランピース」にとりつかれた二人の"連邦人"の人生を描く年代記

ユダヤ人音楽家の「イザーク」は、ナチスドイツの強制収容所で生死の境をさまよっている所を
クラウンピースと出会い、その内に眠る狂気の資質を見い出され、愛されるようになる
クランピースの力を借りて敵も同胞も家族も全て葬り去ることで地獄を生き延びたイザークは
"慈悲深いソビエト連邦に解放された"後、連邦へ移り住み、連邦への忠誠を糧に才覚を磨き、
音楽家としての名声を高めることに成功する。しかし、才能を高め出世してゆくイザークを
クラウンピースは「つまらない」「昔の方が良かった」と評し、距離をおくようになる
その後類稀なるいじめられっ子体質と言わざるを得ない「ユダヤ人」の民族的宿命により
敬愛する国家から嫌悪と嫌疑の目を向けられ、監視の対象となり、進退窮まったイザークは
再び彼の目の前に現れたクラウンピースに「自らを殺す事」を望み、恍惚の中で理性を失う

宇宙飛行士を夢見ていたエリートくずれの「セルゲイ」は、アポロ11号の月面着陸の報を聞き
アポロが辿り着いたのは「本物の月」を隠すための「偽物の月」に過ぎない、という事実を看破した
セルゲイの凡庸な才覚は完全に科学主義に埋没するには不十分であったがゆえに月に神秘的憧れを抱き、
神話の世界=月にたどり着いたものが帯びる筈のオーラが、アポロ11号には無いことに気づいたのである
こうした独特の嗅覚が「ギリギリ合格」だったため、彼の元にもまた、クラウンピースが現れるようになる
宇宙飛行士の夢に破れたものの、宇宙センターの仕事にありついたセルゲイの生活は比較的裕福で
祖国への愛にも十分溢れていた。故に、おなじくソビエトを称揚するイザークの音楽を心酔し、私淑していた

ある時、イザークとセルゲイはクラウンピースの力に誘われて地球を脱出、月の地表から、地球を眺める
地球に帰還した時、それが夢だったのか現実だったのかは最早定かではなかったが、この神秘的体験は
セルゲイとイザーク、そしてセルゲイとクラウンピースをつなぐものとして深く心に刻まれることとなった

連邦人のかがみとも言うべき生活を送るセルゲイだったが、ある時
「人手が不足しているから」という理由で犯罪者に仕立てられ、シベリア送りにされてしまう
こうして過酷な環境に放り込まれたセルゲイは、弱い者いじめや貧弱な演奏会を心の頼りに
日々を生きていたが、ある時仲間にイザークの話題を出し、彼を褒めたたえたところ、
誰もが口をそろえて「そんなやつは知らない」と訝んだ。それはあたかも、セルゲイの狂気が
実在しない音楽家を作り出したかと疑うような口ぶりだったセルゲイは、自身の正気を疑った
敬愛するイザークも、彼と自分を邂逅せしめたクランピースも、全てが自らの妄想が生み出した
虚構ではないかという大いなる不安は、セルゲイの心身を大いに殴りつけた。それは、死に勝る恐怖だった

もとより過酷な生活で衰弱していたセルゲイは、最早内なる不安に耐える体力を残してはいなかった
翌日、クラウンピースの残り香をさがすかのように、星条旗にくるまれて冷たくなったセルゲイが発見された