岸田文雄首相は20日、寺田稔総務相(64)=自民党岸田派、衆院広島5区=の「政治とカネ」を巡る問題を受け、寺田氏を更迭する意向を固めた。与党幹部が明らかにした。寺田氏の後援会の収支報告書の記載漏れなどが相次いで判明し、与党内でも、21日から始まる2022年度第2次補正予算案などの審議への悪影響を懸念する声が強まり、首相も寺田氏の交代を決断した。早ければ21日にも寺田氏の後任を決める方針だ。

 岸田政権の不祥事などでの閣僚の辞任は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が次々に判明した10月24日の山際大志郎前経済再生担当相=麻生派=と、死刑制度を巡る失言による11月11日の葉梨康弘前法相=岸田派=の更迭に続き3人目。1カ月足らずで3人の閣僚が交代する異常事態となり、政権は大きなダメージを負った。

 首相は19日、訪問先のタイ・バンコクで記者会見し、補正予算案などの政策課題や閣僚の説明責任に言及した上で、寺田氏の処遇について「この二つの観点からどうあるべきか、首相として判断していきたい」と述べていた。

寺田氏は財務省出身で当選6回。自民党岸田派(宏池会)を創設した池田勇人元首相を義理の祖父に持つ。20日午前、広島県呉市の自宅を出た際、記者団から「辞任しない考えは変わらないか」と問われ「はい」と答えた。その後、広島空港から航空機で東京都に戻った。

 総務相は政治資金規正法や公職選挙法を所管する閣僚で、野党は「政治資金や公選法を所管する大臣が、さまざまな疑惑に満ちあふれている」(立憲民主党の泉健太代表)として、寺田氏の早期辞任を要求していた。寺田氏は続投する意向を繰り返し示してきたが、自民党内からは、補正予算案と旧統一教会の被害者救済のための新法案の審議への悪影響を懸念し、辞任論が強まっていた。

 寺田氏を巡っては、週刊文春で10月上旬、寺田氏が代表を務める政党支部など二つの政治団体が、事務所を置く呉市のビルの一部を所有する寺田氏の妻に賃料を支払っており、これが「裏金」の可能性があると報じられた。寺田氏の妻が代表の政治団体が源泉徴収せずにスタッフへの報酬を支払ったとする「脱税疑惑」も取り上げられた。

 地元後援会「寺田稔竹原後援会」(広島県竹原市)が政治資金収支報告書に会計責任者としてすでに死亡した人物を記載していた問題も発覚。政治団体「寺田稔呉後援会」(呉市)への貸付金1250万円を資産報告書に記載していなかったことが判明し、11月17日には週刊文春が21年の衆院選で運動員買収をしたとの疑惑を報じていた。【今野悠貴、手呂内朱梨】

毎日新聞
2022/11/20 17:52
https://mainichi.jp/articles/20221111/k00/00m/010/125000c