宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁を招いた大規模なイベントに愛知県の大村秀章知事が送った祝電が、韓総裁を賛美する内容に書き換えられたと、知事側が教団に抗議していたことが判明した。大村知事は22日、毎日新聞の取材に「勝手に書き換えられ、極めて不愉快で遺憾だ。抗議に対して旧統一教会側も改ざんを認めて謝罪した」と話した。

 ◇教団が謝罪「内容一般的だったので」

 イベントは2019年10月に愛知県国際展示場(同県常滑市)で開催された「孝情文化祝福フェスティバル 名古屋4万名大会」。国内外の信者や関係者が集まり、教団トップの韓総裁も来日した。この様子を撮影した動画を確認したところ、大村知事の祝電は会場で紹介され、「世界平和の実現に向けて、地球的規模で環境を整えてくださる韓総裁の力強い信念とリーダーシップに心より敬意を表するとともに、会のご成功を祈念いたします」などと読み上げられた。

 知事周辺によると、教団側に加え、同県碧南市の禰宜田(ねぎた)政信市長からも依頼され、イベントに祝電を送った。「もともと韓総裁を持ち上げる内容ではなかった。(教団側に)抗議したところ、『祝辞の内容が一般的だったので改ざんした』と認めた」という。

 禰宜田市長は08年の就任後、旧統一教会との関係を市議会で質問されたことがある。祝電の依頼や改ざんについて「わからない」「知らない」と答えた上で、自身が信者かどうかは「ノーコメント」と語った。

 教団の広報担当者は祝電の改ざんについて、「主催は家庭連合ではなく、実行委員会なので詳しいことは分からない」としている。

 旧統一教会は1980年代以降、多額の献金や、不安をあおって高額な物品を売りつける「霊感商法」との関わりが指摘された。安倍晋三元首相への銃撃事件を巡り、政治家との関係も問題視されている。

 安倍氏に対する殺人容疑で逮捕された山上徹也容疑者は当初、愛知であったこのイベントのために来日した韓総裁を火炎瓶で襲撃する計画だったが、会場に入れず断念したとされる。

 今春、教団の関連組織が開いた行事に安倍氏が寄せた動画メッセージを視聴。奈良県警は、山上容疑者が動画視聴をきっかけに安倍氏も敵視するようになり、韓総裁と同列の襲撃対象に据えたとみている。

 ◇他の知事や政治家へのアピールか

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人を務める山口広弁護士の話 とんでもないことで、驚いた。知事という立場の政治家が、あたかも旧統一教会の協力者であるかのような形を作り内部固めをし、かつ他の知事や地方の政治家にもアピールをするためだろう。旧統一教会自体が草の根で市議や県議、市長、知事らに浸透させようとしており、そのために手段を選ばずやってしまったのだろう。【酒井志帆、山下俊輔、森田采花、川瀬慎一朗】

毎日新聞
7/22(金) 22:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/d4bff6ddffad61405f4350204c3b00947ad00567