「防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領から強い支持を得た」

5月23日、バイデン大統領との会談後の記者会見で、岸田文雄首相は胸を張りながらこう語った。

政府は、6月7日に閣議決定した「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」で、ロシアのウクライナ侵攻などに触れ、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増しているとして《国防予算をGDP(国内総生産)比2%以上》を目指すと明記した。

’22年度の防衛費はGDP比約1%で約5兆4000億円。これを2%にした場合、あらたに5兆円が必要となることにーー。

「防衛費を倍増することで、日本は、アメリカ、中国に次いで世界で3番目の軍事費支出国になります。軍隊を持たないと世界に宣言している国が軍事大国になってしまうのです。しかも、そのしわ寄せは確実に家計に及びます」

そう語るのは「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さん。

■国債頼りは危険。しわ寄せは家計に

防衛費の倍増の財源は明らかになっていない。安倍晋三元首相は「(国の借金である)国債で対応すればいい」と語っているが……。

同志社大学の浜矩子教授(国際経済学)がこう憤る。

「すでに現在の国債発行高は、第二次世界大戦時と同じレベルです。軍備増強のために、国債を発行することは憲法違反の可能性も。忘れてはならないのが国債の返済にはその分の金利を支払う必要があること。今はほぼゼロ金利ですが、今後、インフレや円安などから金利が上がる可能性も少なくない。財務省によると、国債の金利が1%上昇すると2年後の年利払いは3.7兆円増えると試算。その負担は、国民にのしかかってくるのです」

国債に頼らない場合、別の予算からの付け替えが予想される。前出の山家さんが語る。

「声が大きくないところから予算の削減をするのが今の政府の特徴。狙うのは年金、医療、福祉など社会保障費です。たとえば高齢化により医療費自体を抑えることは難しいなか、国民の自己負担を増やしていくしかない。防衛費が増額した5兆円分をそのまま医療費に換算すれば、医療費の窓口負担3割の人が、6割負担になる試算もあります。さらに、今でさえ年々減額されている年金受給額も、5兆円分をそのまま充てることになれば、現在約4000万人の受給者の年金が年12万円減額します」

より現実的なのが消費増税だ。

「かりに防衛費の倍増分を税収でまかなうためには、2%の消費増税が必要に。それでも欧州に比べて消費税率が低いことから、経団連からも19%に引き上げろと圧力があります。防衛費のGDP比をNATO(北大西洋条約機構)並みに引き上げようとしている岸田首相が、消費税も欧州並みにという理由だけで、消費税12%に引き上げても不思議ではありません」

政府はただ国民を不安に陥れている

そうなると、家計は苦しくなる一方だろう。

ところが、先月、毎日新聞が行った世論調査では、防衛費について「大幅に増やすべき」との回答が26%。「ある程度」の回答も合わせて8割弱が増やすべきだと答えた。

早稲田大学の水島朝穂教授(憲法学)が語る。

「これは不安感に便乗する政府の常とう手段の影響です。たしかにロシアのウクライナ侵攻、弾道ミサイルの発射実験を続ける北朝鮮や軍事的活動を活発化する中国などを脅威と感じる人はいる。しかし、その脅威を客観的に捉えることなく、政府はただ危機をあおりたて、国民を不安に陥れて防衛費の増額を画策しているのです」

この防衛費の倍増は、日本のためにもならないと語るのは、上智大学の中野晃一教授(政治学)だ。

「岸田首相がバイデン大統領に語った決意は、増額した防衛費で『アメリカからたくさん武器を買います』というもの。潤うのは国民ではなく、アメリカの軍需産業です。保育や教育など社会保障に税金を使う人への投資は、いずれ税収が増えたり、納税者人口が増えたりするなどの相乗効果が期待できます。ところが、防衛費を増やして、武器を買っても雇用も生まれず、維持費だけがかかる。私たちの経済や暮らしが好転していくことはないのです」

最後に前出の水島教授が語る。

続きはWebで

女性自身
6/16(木) 15:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/840b99859fb734d46cc88c9a6f0591c43900a55a