盛り上がりに欠ける中、東京五輪が開幕したが、選手以上にもがいているのが菅首相だ。

 23日は、新型コロナウイルスワクチンを世界に供給する米製薬大手ファイザーのブーラCEOを、東京・元赤坂の迎賓館に招いて会談。外国の国王、大統領、首相らの賓客を迎える国の施設で朝食も振る舞い、国賓級のおもてなしだ。

 ブーラ氏はIOC(国際オリンピック委員会)にワクチンを無償提供したことなどから、開会式に出席するため来日中で、ワクチン担当の河野行革担当相も同席。10月以降に予定している供給分の前倒しを要請したという。しかし、成果についてのアナウンスはない。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。

「ワクチン接種を『最後の切り札』と繰り返す首相は、希望者への接種完了について『10〜11月までの早い時期』と前倒しに言及しましたが、肝心の弾が圧倒的に不足している。焦りは相当でしょう。4月の訪米の際もブーラCEOとの直接会談で追加供給を要請しようと試みましたが、対面を断られ、ワシントンとニューヨークを電話でつなぐ疑問だらけの会談で面目を潰された。それで、一民間人に過ぎない企業トップを五輪のドサクサにまぎれて国賓接遇し、機嫌を取って要求をのませようというのでしょう」

■小林賢太郎氏のスピード解任も忖度

 ファイザーからは6月までに1億回分、7〜9月に7000万回分、10月以降に2000万回分の供給を受けることになっているが、足元のワクチン不足は深刻だ。全国の自治体で予約キャンセルや新規申し込みの停止が相次ぎ、秋までに実施される衆院選の前哨戦に位置付けられた都議選で自民党は“惨敗”。内閣支持率も30%を割り込み、「危険水域」に突入している。

「ホロコースト問題で開閉会式の演出担当だった小林賢太郎氏がスピード解任されたのは、官邸の強い意向が働いたからです。菅首相が『言語道断』と強い言葉で非難したのも、ブーラCEOがユダヤ系で、両親がホロコーストの生存者であるというバックグラウンドを忖度したからではないか。ワクチン頼みの精神論で突っ走った結果の土下座交渉です」(角谷浩一氏)

 ブーラ氏は菅との会談後にツイッターを更新し、〈2022年4月までに米国にさらに2億回分のワクチンを供給する〉などと書き込んでいたが、日本については言及ナシ。

 ことごとく外してきた菅首相の思惑は、またも外れることになるのか。

日刊ゲンダイ
2021/07/24 13:50
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