政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は18日、東京都内の日本記者クラブで会見し、東京五輪・パラリンピックの感染リスクについて「無観客が望ましい」とする提言内容を説明した。尾身氏らは同日、政府と大会組織委に提出。「リバウンドが東京などでも起こり得る。開催の前でも感染の拡大、医療のひっ迫の予兆を察知したら、早急に強い対策をうってほしい」と訴えた。

 尾身氏は、当初の提言には、五輪の「開催の有無を含めて検討して下さい」といった文言が含まれていたと明かした。しかし、菅義偉首相がG7で国際的に五輪開催を表明したことで、「意味がなくなった」として、内容を削ったという。
 提言では、観客を入れる場合には、現在の大規模イベントの基準よりも厳しく人数制限をすることや観客は開催地の人に限ることを求めた。感染拡大の予兆がある場合には無観客に変更することも示した。
 緊急事態宣言中にもかかわらず、首都圏では既に人流が増加傾向であることから、「ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者および重症者の再増加がみられる可能性がある」と強調した。
 尾身氏は「単にステイホームと言っても、心に響かないというか、限界にきている。意識の面でも経済的な面でもそういうところがあると思う」との認識を示し、五輪・パラリンピックを観客を入れて開催することで、「一生懸命協力している市民に矛盾したメッセージとして伝わり、協力を得られなくなる。警戒心が自然と緩んでしまうリスクがある」と述べた。
 一方で「選手は、五輪という一生に一度あるかどうかということに心身を集中して努力していた。その人たちの思いを、いち市民としてかなえられればいいな、という思いはかなり強くわれわれにもあった」とアスリートの心境に寄せて語る場面も。
 観戦については「会場にいきたいという思いは私もある」とした上で、通信技術を駆使した遠隔地からの観戦する方法の推進を呼び掛け、「あたかも(会場に)いるような、世界にパンデミックの中で行える、新しい応援、新しい観戦の仕方のモデルを日本がつくることを期待したい」と述べた。
 質疑応答での主なやりとりは以下の通り。

◆実行するのは政府の責任
 Q 昨日の菅首相の会見で、有観客が既定の事実のように話した後のタイミングで提言したことの実効性は。政府の決定に与える影響は少なくなったのではないか。
 尾身氏 もう観客を入れるという方向で動いているから、無観客は遅いんじゃないかというご意見、分かります。
 リスクを評価するというのが、われわれの責任。われわれの評価をどう採用するかは政府、主催者の責任。責任と役割があきらかに違うと思う。
 無観客の方がリスクが少ないですよ、と言った。しかし、観客を入れるのであれば次善の策として、こうしたことを申し上げている。
 実行するというのは、われわれの仕事ではなくて、リスクを客観的に評価して提出する。決断は政府の役割だし、そういうことをやっていただけたら。

続きはWebで

東京新聞
2021年06月18日 20時40分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/111376