「首相に『やるでしょ』と聞いたら、『やるよ』と言っていた」

 13日、菅首相と面会した森田健作・前千葉県知事がこう明かしたのは、東京五輪の開催についてだ。国内外から中止論が噴出しても、菅首相はまだまだヤル気らしい。開催直前にコロナ死者が倍増しても、「やるよ」なんて軽々しく言えるのか。

 米ワシントン大医学部保健指標評価研究所(IHME)の試算が興味深い。世界各国のコロナ死者や1日あたりの新規感染者数を予測しており、最新データ(7日更新)によると、日本国内の累計のコロナ死者は今年9月1日までに22万人、1日あたりの感染者は1万3000人にも上る。

 衝撃的だが、あくまでも数理モデルを用いた予測である。ただ、過去の予測値は実数と乖離しているものの、死者数も感染者数も、予測を10分の1にするとこれまでの日本の感染状況とほぼ一致しているから驚きだ。

■増加ペースは2倍

 実際、今月12日までの3週間の予測と実数を比較すると、予測は累計死者数が実数の10.36倍、日ごとの死者数が9.32倍、1日あたりの感染者数が9.40倍にあたる。つまり、予測の10分の1と実数がリンクしているのだ。

 そこで問題なのが、五輪開催当日の数字だ。予測では累計死者数は19万7153人。10分の1に直すと、1万9715人だ。これまでの累計死者数は1万1200人(12日時点)だから、これから五輪開会式までの2カ月半の間に、約1万人が亡くなる計算である。

 累計死者数が5000人から1万人を突破してしまうまで、わずか3カ月だったことを踏まえると、予測から読み取れる今後の増加ペースは約2倍。五輪本番までにコロナ死者が倍増する可能性があるのだ。東京五輪関連の著書がある作家の本間龍氏がこう言う。

「一般市民だけでなく医療従事者からも五輪開催に批判が集まる中で、政権がなすべきことは、開催できる根拠を示すことです。国内外の専門家が予測や分析をしていますからね。『仮定の話には答えられない』という、政権の常套句は通用しません」

 菅首相は五輪開催について聞かれても、「安心して参加できるようにする」「国民の命と健康を守っていく」の一点張り。本当にその気があるなら、サッサと中止を決めたらどうか。

日刊ゲンダイ
2021/05/14 14:15
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