https://news.yahoo.co.jp/articles/0b5013a4de1a0726682361cf884af831c71b4e53
 ソウル市長選が7日に投開票された。野党「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)候補(60)が約280万票(得票率57.5%)を獲得し、約191万票(同39.18%)の与党「共に民主党」の朴映宣(パク・ヨンソン)候補(61)に圧勝した。同日行われた釜山市長選も、野党候補が与党候補に圧勝した。

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 ソウルは、韓国の全有権者の約5分の1が住む大票田であり、今回の選挙は文在寅政権の4年間の国政に対する審判だと位置づけられた。事前の予想では「勝者と敗者の得票率が15ポイント以上開けば、文在寅政権は急速にレイムダック状態に陥る」という見方が大勢だった。

 この選挙結果を受けて、文政権はどうなっていくのだろうか。来年3月に迫った次期韓国大統領選はどんな展開になるのだろうか。
土地投機疑惑で“そっぽ向かれた”文政権

photo by gettyimages

 韓国大統領府の元高官は、今回のソウル市長選の特徴について「“文在寅不動産政策審判選挙”だった。候補者に焦点は当たらず、ひたすらイシュー(争点、論点)が注目された選挙だった」と語る。

 ソウルのマンションの平均価格は文在寅政権が発足した2017年5月時点で6億600万ウォン(約5900万円)だったが、昨年の時点で9億ウォンを突破した。さらに、最近になって韓国土地住宅公社(LH)職員らが内部情報を元に不正投機を行った事件が浮上。3月には、韓国大統領府で経済政策などを担当する金尚祖(キム・サンジョ)政策室長が、不動産価格抑制策の施行直前に、自分に有利な不動産取引を行った疑惑で更迭された。

 金氏は学者時代、富の独占だとして辛辣な財閥批判を繰り広げ、「財閥スナイパー」というニックネームを頂戴した人物だったが、自身にブーメランが返ってきてしまった。不動産問題にずっと焦点が当たる格好になり、文政権の主力支持層だった20代から30代が、「家が買えない」「文政権は公正と言えるのか」と怒り、そっぽを向いてしまった。
韓国世論の変化は次期大統領選にも影響

呉世勲氏(photo by gettyimages)

 この結果、韓国の世論調査会社、リアルメーターが1日に発表した投票前最後の調査結果では、呉世勲候補を支持する人が57.5%、朴映宣候補が36.0%となった。他の世論調査もほぼ、呉候補が朴候補に20ポイント程度の差をつける展開になっていた。これらの数字は、ソウルが代表する韓国世論の幾つかの変化を物語っている。

 ひとつは、2016年から17年にかけて、ロウソクを手に週末ごとに集まった市民たちが朴槿恵大統領(当時)の退陣を迫った「ロウソクの灯革命」が吹き飛んでしまったという事実だ。

 韓国の人々の政治志向は大体、「保守4割・進歩(革新)3割・無党派3割」ないし、「保守3割・進歩(革新)3割・無党派4割」と言われている。ロウソク集会が行われていたころは、無党派に加えて保守支持層の一部も当時の朴槿恵政権に愛想を尽かしていた。それが、2017年大統領選での文在寅氏の大勝利につながった。

 だが、ソウル市長選の世論調査をみると、保守支持層はほぼ元に戻り、さらに無党派の支持も呉候補が獲得していることがわかる。保守は少なくとも「ロウソクの灯“後遺症”」からは立ち直ったと言えそうだ。ほんの半年前まで有力だった「次の大統領選も進歩(革新)の圧勝」という下馬評は姿を消した。

 もうひとつは、かつての3金政治(金大中、金泳三両元大統領、金鍾泌元首相)のような、カリスマ性のある政治家がいなくなり、人物が勝敗を決める選挙はほぼ姿を消しているという状況だ。呉候補もソウル市長選への立候補を表明した頃の支持率は20%程度だった。

 当初は、ソウル市長時代の2011年に市政を途中で投げ出した経緯から、支持率の伸び悩みを懸念する声もあったほどだが、不動産問題の追い風を受けて、ぐんぐん支持率を伸ばした。呉候補も、この状況をよく理解していたようで、市長選では人物論争を避け、「市民の皆さん、不動産高くありませんか」といった呼びかけを行い、うまくイシュー選挙の波に乗った。
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(略)