性的少数者(LGBT)への国民の理解を促すため、議員立法による新法の制定論が自民党内で浮上している。稲田朋美元防衛相が委員長を務める「性的指向・性自認に関する特命委員会」が中心となり、今国会での成立を目指す。党内には保守派を中心に慎重論もあるが、同性婚が認められないことは「違憲」とした札幌地裁判決を追い風に、立案に携わる党関係者は「東京五輪・パラリンピックまでには提出したい」と意気込む。

 札幌地裁判決が出た17日、稲田氏はツイッターで「LGBTの方々への理解が増進すれば、同性婚やパートナーシップについての議論も深まる」と法整備の意義を強調した。
 同特命委は2016年に、LGBT理解増進法案の要綱をまとめた。基本理念として「性的指向・性同一性にかかわらず、全国民が人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」を明記。政府に対して基本計画を策定し、定期的な施策の検証や、関係省庁による連絡会議の設置を求めている。
 ただ、この時は党内の慎重論を受けて国会提出には至らず、議論はそれ以降「棚上げ」となっていた。特命委関係者は「当時と現在では明らかに空気が変わってきている。今回は提出できるのではないか」と語る。男女共同参画をうたう五輪を控え、国内外に取り組みをアピールする狙いもある。
 LGBTをめぐっては、下村博文政調会長が「社会全体の理解を促進し、多様性に寛容な社会を構築するため議論してほしい」と特命委に要望。公明党も同性婚に関するワーキングチームを始動させている。
 しかし、自民党内には伝統的な家族観を重視する保守派を中心に慎重論があり、特命委関係者は「反対派がどれだけいるかはまだ分からない」と不安の声も漏らしている。

時事通信
2021年03月29日07時02分
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