軽症や無症状の新型コロナウイルス感染者が宿泊療養する施設について、山梨県が富士北麓(ほくろく)地域にも設ける方針を伝えた今月1日の地元説明会で、地元の県議が「我々としてはマイナス施設だ」と発言していたことがわかった。

 複数の出席者によると、地元側は自治会長や区長ら40人超が参加。若林一紀副知事は近隣都県で多くの感染者が自宅待機を余儀なくされていると述べ、「県内では今後も適切に療養できるよう、先手対応・事前主義で富士北麓地域にも開設する」と理解を求めた。

■住民からは反対意見なし

 地元側からは「65歳以上の軽症者はどうするのか」「何人入るのか」といった質問が出た。施設に反対の意見はなかったという。

 終了間際、富士北麓の選挙区から選ばれている白壁賢一県議(自民)が口を開いた。「地域の基幹産業は観光。風評被害で客が来なくなる」と述べ、「迷惑施設とまでは言わないが、何らかの救済措置を」「我々としてはマイナス施設。それなりの何かを持ってきていただかないとウェルカムというわけにはいかない」と要望したという。

 感染者差別につながる恐れがあり、担当の県幹部は「県内で力を合わせて新型コロナに立ち向かうことが大切で、理解を願いたい」と語った。

■「風評被害が広がれば大変」と説明

 白壁県議は朝日新聞の取材に、「風評被害が広がれば大変なことになる。観光産業が中心の地域であることに気を使ってほしいというのが真意だ」と説明した。

 説明会に出席した地元首長は「感染予防対策をしっかりするなら、施設を迎えることもやぶさかでない。長年観光で潤ってきた。地球規模で疲弊している今は、わがまちがお返しをする時だ」と話した。

 県はこれまで北杜市と甲府市のホテルを宿泊療養施設として感染者を受け入れてきた。富士北麓地域の施設は4月にも開設する。(吉沢龍彦)

朝日新聞
2021年3月21日07時40分
https://www.asahi.com/amp/articles/ASP3P2DTMP3MUZOB014.html