総務省の違法接待問題に新たな疑惑が浮上した。菅首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」に対し、総務省側が「脱法スキーム」を指南していた可能性だ。行政がゆがめられた疑いは深まる一方である。

 野党が問題視するのは、外資規制の対象となるBS4K放送を巡る認定だ。東北新社は2016年10月、総務省に申請し、17年1月に認定を受けた。申請直前の16年9月末の発行株式に占める外資比率は19.96%と、「20%未満」とする放送法の条件をクリアしていたが、認定後の17年3月末に21.23%に上昇。違法状態を解消しないまま、新設の完全子会社「東北新社メディアサービス」にBS4K事業の承継を同年9月に申請し、10月に認定された。

 決裁当時の担当トップは山田真貴子情報流通行政局長。長男らから7万円超もゴチになったのがバレて、辞職した前内閣広報官である。

 この問題を指摘した立憲民主党の小西洋之参院議員は、8日の予算委員会集中審議でBS4K事業承継のプロセスに焦点を当てた。東北新社は17年7月に関連する3つのチャンネルの事業を本社に承継し、衛星基幹放送を集約させると発表。ところが、わずか3週間後に撤回し、全4チャンネルの子会社承継を発表した。そして、9月に「東北新社メディアサービス」を設立し、総務省の認定を得て、BS4K事業を移したのである。

■外資規制違反逃れ

 なぜ、こんなドタバタを演じたのか。違法状態がバレて、認定取り消しになるのを恐れたからではないのか。その際、総務省の“ゴチ官僚”の入れ知恵はなかったと言い切れるのか。

 総務官僚時代に放送行政を担当した小西議員は、「外資規制の違反を回避する唯一の方法は子会社づくり。東北新社から総務省にどのような相談があったのか」と質問。吉田博史情報流通行政局長は「大臣から事実関係を調べるよう指示をいただいており、改めて確認を行っている」と逃げたが、繰り返し問われると「一般論として申請書の書き方などの相談があったかもしれない」などと明かした。

 また、東北新社による接待で処分された吉田真人総務審議官ら3人が、事業承継に関わる8件の決裁文書に延べ11回サインしていたことも判明。よくも「利害関係者とは認識していなかった」なんて言えたものだ。

 総務省の問題はまさにスガ親子案件。徹底解明が必要だ。

日刊ゲンダイ
2021/03/09 14:10
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