連日国会で追及が続く、菅義偉首相の長男・菅正剛氏の違法接待問題。昨年10月から12月にかけて、衛星放送などを運営する東北新社の部長職にある正剛氏が、許認可権を持つ総務省幹部を接待し、飲食代を支払うのみならず、タクシーチケットや高級手土産も渡していたことを2月4日発売の「週刊文春」が報じた。

 こうした利害関係者からの供応接待や金品の授受は国家公務員倫理法に抵触する疑いが濃厚で、総務省が調査に乗り出している。

 総務省の局長は、接待の場で衛星放送など東北新社の業務に関する話題が出たことを国会答弁で再三否定してきたが、これが虚偽答弁にあたる可能性が高いことが、当日の音声記録からわかった。

 衛星放送などの許認可にかかわる総務省情報流通行政局のトップ、秋本芳徳局長は、国会で接待の場について、あくまで「本人または両親が東北出身者の懇親会」と答弁。東北新社の事業や、衛星放送などについてその場で話題にのぼったかを再三問われ、「東北新社様の事業について話題に上がった記憶はございません」(2月10日衆院予算委)、「衛星放送やスターチャンネル(東北新社の子会社が運営)について、話題になった記憶はございません」(2月12日衆院予算委)と答弁している。

 問題となっているのは、昨年12月10日、正剛氏と東北新社の子会社・東北新社メディアサービスの木田由紀夫社長が、秋本局長を六本木の小料理屋で接待した際の会話内容。

 そこで、経緯を検証するため、「週刊文春」では接待現場の音声記録を解析した。音声は、接待が行われた店に客として入店した複数の「週刊文春」記者が、付近の座席から録音したもの。他の客の声や雑音などを専門業者に依頼して除去し、解析を進めたところ、東北新社の事業や衛星放送などにかかわる具体的な会話を正剛氏らと秋本局長が交わしていたことが判明した。以下のようなやり取りが記録されている。

虚偽答弁の証拠となる音声内容

正剛氏「今回の衛星の移動も……」

木田氏「どれが?」

正剛氏「BS、BS。BSの。スター(チャンネル)がスロット(を)返して」


木田氏「あぁ、新規の話? それ言ったってしょうがないよ。通っちゃってるもん」

正剛氏「うちがスロットを……」

木田氏「俺たちが悪いんじゃなくて小林(史明衆院議員、元総務政務官)が悪いんだよ」

(略)

秋本局長「いやぁ、でも(小林氏は)どっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」

木田氏「そう。でしょ? でしょ? あれ一回ね、(小林氏と)どっかで話そうとは思ってる」

 音声からは、接待の場で、東北新社が展開する衛星放送ビジネスについて話し合われていることが確認できる。また、東北新社と秋本局長が、BS放送の新規参入に積極的だった小林・元総務政務官に対して警戒を強めていることもうかがえる。

 国会で違法接待を追及されている総務省幹部が、虚偽答弁を重ねていた証拠となる音声の内容が明らかになったことで、過去12回に及んだ異例の接待の目的が何だったのか、東北新社側が接待した相手は秋本氏、谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官、湯本博信官房審議官の4人以外にいなかったのか、さらなる調査が求められそうだ。

 2月18日(木)発売の「週刊文春」では、昨年の接待当日の様子や、事業にかかわる音声記録の別の部分の詳細、東北新社子会社の元取締役の驚きの告白などを詳報する。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/43512
https://www.youtube.com/watch?v=yN_W6ZIVqW8