11月29日投開票の鹿児島市長選は無所属新人の元鹿児島県議下鶴隆央氏(40)が政党公認・推薦の新人3人を破り、初当選を果たした。新型コロナウイルスの影響で閉塞(へいそく)感が漂う中、変化への期待が同市最年少のリーダーを誕生させた。保守王国の鹿児島で、自民党は7月の知事選に続いて推薦候補が落選して2連敗。次期衆院選をにらみ、つかみきれぬ民意に戸惑う。

 「支持を徹底できなかった。反省して立て直したい」。自民が推薦した新人の元市議上門秀彦氏(66)の落選が決まり、党県連選対委員長の園田修光参院議員は言葉を絞り出した。

 政党や団体の支援に頼らない下鶴氏が約8万票を獲得したのに対し、上門氏は半分以下の約3万票。4カ月前の知事選でも、推薦した現職の三反園訓氏(62)が無所属新人の塩田康一氏(55)に大差で敗れており、自民の危機感は大きい。

 市長選で争点となったのは、9期36年続く市役所OBによる市政運営を継続するか否かだった。現市長が支援する元副市長松永範芳氏(63)に対し、市議を9期務めた上門氏も「変化」を訴えたが、当選したのは「今までは市役所出身者による市政でよかったが、これからは通用しない」と主張した下鶴氏だった。

 下鶴氏に投票した50代男性は「(コロナ禍で頭角を現した)全国の若いリーダーのように何かやってくれそう」と期待。自民党選対幹部は「知事選でのダメージを引きずって組織を立て直せなかった。コロナ禍の不安、市政への不満などが合わさって地方の世代交代の波になった」とみる。

 次期衆院選をにらみ、従来型の組織戦を展開してきた自民県議らは「訴えが届かない」ことに危機感を抱く。「変化」を求める波が国政選挙に寄せれば、与党にとって逆風になる可能性もある。鹿児島市域を含む衆院鹿児島1区は、前回衆院選で立憲民主党の川内博史氏に敗れた保岡宏武氏と、比例九州現職の宮路拓馬氏との公認争いが続く。仮に保守分裂となれば野党を利することになる。県連会長の森山裕衆院議員は「2人が政治家としてやっていく道」を探るが、両氏は一歩も引かない構えだ。 (片岡寛、河野大介、郷達也)

西日本新聞
2020/12/1 6:00
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