※前半省略

「見えざる金脈」

 この藤木氏以外に、菅氏を支える「ドン」がもう1人いる。それは、パチンコ・パチスロ界のドンで、政界のタニマチとしても知られる「セガサミーホールディングス」の里見治(はじめ)会長(78)である。

 本誌は今年2月に掲載した〈「森喜朗」新財団が呑み込む「嘉納治五郎財団」の五輪買収「5億円」疑惑〉という特集記事で、菅氏と里見会長の「意外な繋がり」を明らかにしている。

 次期五輪の開催地が東京に決定した13年秋頃、里見会長は新橋の料亭で、

「東京オリンピックは俺のおかげで獲れた」

 と自慢した上で、次のような裏話を披瀝した。

 菅氏から「(五輪を東京にもってくるために)アフリカ人を買収しなくてはいけない。4億〜5億円の工作資金が必要」と頼まれ、里見氏自身が3億〜4億円、知人の社長が1億円用意して、中身がブラックボックスになっている「嘉納治五郎財団」に振り込んだ――。

 本誌の取材に対し、セガサミー広報部は、セガサミー社から「嘉納財団」への寄付実績があることを認めた。さらに、財団の内部資料を入手したところ、12年から13年にかけて、里見会長からと思しき2億円の寄付金収入が計上されていることが判明したのだ。

 菅氏から依頼され、ポンと大金を出す里見会長。この記事により、菅氏の「見えざる金脈」の一端が明らかになったわけだが、里見会長の側もしっかり「実」を取っている。

「里見さんの娘さんは13年に経産省の官僚だった鈴木隼人氏と結婚しています。その鈴木氏は14年の衆院選出馬の際、自民党の比例東京ブロックの単独1位という破格の待遇を受け、何の苦労もなく当選した」

 と、永田町関係者。

「また、カジノ誘致に積極的だった里見さんの思いに応えるかのように、安倍政権は16年に『カジノ推進法』を成立させた。今年1月には、セガサミー社長である里見さんの息子が、“横浜カジノ”への参入を目指す方針を明らかにしています」

「横浜進出」は、里見会長が2000年代初め頃から抱いていた「悲願」で、その時期、人を介して藤木氏とも会っている。

 安倍総理の退陣表明の直前、菅氏が藤木氏と手打ちしていたことは先に触れた通り。しかし、藤木氏の立場は「カジノ反対」のままだ。いかにして二人のドンを納得させるのか。「菅総理」が直面する最初の難問になりそうである。

デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09180556/