安倍政権がコロナ対策の長期化に向けて投入したスマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA」を巡り、開発者側に過剰な負担を強いていたことが「週刊文春」の取材で分かった。

 そもそも、COCOAとはいったいどういうアプリなのか。

「アプリを入れたスマホ同士が近づくと、暗号化された符号が交換される。アプリには過去14日間の行動が記録されており、陽性者と濃厚接触していれば通知が届き、医療機関の受診を促す仕組みです。安倍晋三首相が会見で、このアプリを『クラスター対策の鍵』『人口の6割近くに普及すれば大きな効果があるという研究がある』と紹介しました。6月19日に厚労省が試行版を公開しましたが、直後に不具合が発覚したため、本格運用は7月3日からとなりました」(厚労省担当記者)

 プログラムを開発したのは民間企業で働くエンジニア・A氏だ。ボランティアで開発を進め、途中からはプログラムを公開して第三者から助言を募る「オープンソース」方式を採った。だが、ようやくリリースを果たした2日後の6月21日、A氏は自身のツイッターでこう呟いた。

〈この件でコミュニティはメンタル共に破綻しました〉〈普通の生活に早く戻りたい〉(注・現在は削除済み)

 なぜ、A氏はここまで追い詰められたのか。

約3週間でリリースしなければならなくなった

「4月上旬、西村康稔コロナ担当相がチーム長を務める内閣官房の『新型コロナウイルス感染症対策テックチーム』で、アプリ開発の議論がスタートしました。その後、開発チームが本格的な開発に着手したのが5月下旬のこと。しかし5月25日、緊急事態宣言解除を発表した会見で、安倍首相が『来月中旬をめどにアプリを導入する』と明言し、西村氏も翌日の会見でこれに追随したため、A氏らは約3週間でリリースしなければならなくなった。6月18日にも安倍首相と西村氏がそれぞれの会見で『明日からアプリを導入する』と再度表明し、途中からアプリの担当になった厚労省では『なんとしても明日リリースしなければ』と職員が深夜まで対応にあたっていたほど。不具合が出るのも無理はありません」(前出の厚労省担当記者)

 ITジャーナリストの三上洋氏によればCOCOAは「開発に半年から1年はかかるアプリ」だという。それを、安倍首相や西村氏が主導して“スケジュールありき”で開発させ、過剰な負担を強いていたとすれば、民間への発注の在り方として議論を呼びそうだ。

 7月9日(木)発売の「週刊文春」では、安倍首相の最近の言動や、官僚を必要以上に疲弊させる西村大臣の仕事ぶり、COCOAの根本的な課題なども含めて詳報している。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/38873