「安倍総理だけがちょっと異様」歴代総理11人を見てきた辻元清美氏が抱く違和感

2月12日の衆議予算委員会で、安倍総理から「意味のない質問だよ」とヤジを浴びた立憲民主党の辻元清美幹事長代行。AERA2020年3月9日号は、そんな辻元氏に歴代総理と安倍総理との違いなどを尋ねた。

──辻元清美議員は歴代11人の総理大臣に質問し、論戦をしてきたそうですが、今、国会で質問に立っていて何か感じることはありますか。

 今の自民党は変質しました。いわゆる「ネトウヨ」みたいな人たちに占領されているんじゃないかとすら思う。だから、野党とか意見の違う国民に対しても、敵と見ているような発言が飛び出すのでは。かつての自民党は、何だかんだ言っても、自分たちが政府与党としての責任を持たなくちゃいけないという空気はあったし、野党や意見が違う人たちに対しても懐が深かったと思うんですね。

──懐の深さをうかがえるエピソードはありますか。

 印象的だったのは官房長官時代、「平成おじさん」で知られた故小渕恵三元総理。小渕さんとは日米新ガイドラインの周辺事態法を巡って、国会で激しくやり合いました。ある日、国会が終わったあとに電話がかかってきたんです。ブッチホンですよ。それで「辻元さんみたいな意見は、たくさんあるのかな」ってこう言うわけ。私は「今、国会の外にも、おかしい、と言う人たちが声を上げています。今度、一緒に行きましょうよ」と言ったんです。

 さすがに拒否されましたが、小渕さんは自ら違う意見に耳を傾けようとする懐が深い人だった。電話の最後に、ボソッと言われたことが印象に残っています。「いや、僕のまわりの人は、そういうことは一切耳に入れてくれないんだよね」って。

──憲法観がまるで違う中曽根元総理とも対決されたんですね。

 昨年、亡くなられた中曽根康弘元総理は、私と憲法観がまるで違いました。9条改正の急先鋒(きゅうせんぽう)だった中曽根さんとは、憲法調査会でご一緒でしたが、実は私が辞職した時、「彼女みたいな、自分たちとは意見が違うけど憲法について対極の意見を体現する議員は国会にいたほうがいいんだ、もったいない」とおっしゃっていたと、側近の人から聞いたんです。「総理、総理、総理」と私が詰め寄った小泉純一郎元総理だって、私が国政に復帰した時、すれ違いざまに「寂しかったよ」って。なんか、人情味があるじゃないですか。

──歴代の総理大臣と比べて安倍総理は何が違うのでしょうか。

 安倍総理だけがちょっと異様すぎる。自分と違う意見は一切、聞かない。街頭演説でも「こんな人たちに負けるわけにいかない」でしょ。一国の総理大臣は、自分に反対の声を上げている人も守る立場なんですよ。しかも国会で「早く質問しろよ」とか、「意味のない質問だよ」とかヤジをいっぱい飛ばしている。憲法63条にはこう書かれています。

「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」

 予算委員会は、政権与党が提出してきた予算を、野党、立法府にチェックしてもらっている場なんです。総理には説明責任がある。けれども、気に入らない意見に対してヤジを飛ばすでしょ。あの場に呼ばれているのは問われたことに答えるためで、総理の自説を述べる場所ではない。その自覚がなく、勉強不足も甚だしい。だから私は、総理大臣という立場を、憲法で規定されているその内容も理解していない人に、憲法改正って言ってほしくないんです。

(編集部・中原一歩)

※AERA 2020年3月9日号より抜粋

2020.3.4 07:00AERA
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