森友学園の籠池前理事長夫妻の長男、籠池佳茂氏。著書やSNSで盛んに持論を発信している。いわく、安倍首相夫妻は森友問題とは無関係、両親は反安倍派の人々に洗脳され利用されていると。だが彼は森友問題について語れるほど事実を知っているのだろうか? 籠池夫妻の法廷闘争が19日、1審判決を迎えるのを機に記しておきたい。

 そもそも佳茂氏は長らく両親と絶縁していた。森友事件の焦点となる国有地の取引、財務省近畿財務局による値下げが行われた頃は一切関わっていないから、その実態を知るよしもない。

 彼が両親の元に戻ってきたのは3年前、森友事件が政治問題になり学園が小学校の認可申請を取り下げた時だ。しかしその後、籠池前理事長が国会で証人喚問された際、関係者が事前に対応を協議しても話に加わろうとしなかったという。学園の運営にもまったくタッチしていない。

 つまり佳茂氏は森友事件の真相、国有地値下げの経緯を何も知らないし学園の内情も知らない。「安倍首相夫妻は無関係」と断言できる根拠は何もないはずだ。知らないのに知っているかのような本を出すのは読者への裏切りだろう。

■「両親は安倍首相に謝れ」

 実際のところ安倍首相が値下げに関与していたと断言できる情報もない。だが安倍昭恵首相夫人が小学校の名誉校長だったこと、昭恵夫人付の政府職員が国有地をめぐり財務省に連絡を取ったことを示すFAXがあるのは事実だ。

 佳茂氏にはさらに重大な疑問がある。籠池前理事長が最近、ライターの赤澤竜也氏と共に出した著書「国策不捜査」によると、籠池夫妻が佳茂氏と絶縁したのは彼が事業名目で夫妻に借りた2500万円を返済しなかったから。後に彼が戻ってからも、夫妻が将来保釈金に充てようと預けた現金のうち900万円を使い込んでしまったという。

 これが事実なら佳茂氏は一刻も早く返済すべきだ。両親は保釈金や裁判費用の工面で苦労しているのだから。だが実際に彼がしているのは「両親は安倍首相に謝れ」と言い募ること。

 そんな佳茂氏には「日本一の親不孝者」という称号を贈りたい。いささか時代がかっているが、これほどふさわしい言葉はなかろう。彼は両親の判決をどんな思いで迎えるのか? それでも、彼が謝ってくれば籠池夫妻はまた受け入れるのだろう。親心で。

日刊ゲンダイ
2020/02/18 14:50
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