「大学入学共通テスト」の国語・数学記述式問題。17日にも延期発表の見通しだが、採点業務は発注済みだ。大学入試センターはベネッセの100%子会社「学力評価研究機構」と2023年度まで約61億円に上る業務請負契約を締結してしまっている。そこで、巨額の税金が支払われ、採点という公的業務を担う同機構を取材しようとしたところ、とんでもない“幽霊会社”の実態が浮かび上がってきた。

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 学力評価研究機構のHPによると、創立は2017年5月で資本金2・4億円。代表取締役社長は服部奈美子氏だ。

 先月、服部社長がベネッセの商品企画開発本部長を兼務していることがバレた。採点業者の社長として知り得た情報を、親会社の本部長の立場で受験ビジネスに生かせば鬼に金棒。「利益相反」「秘密漏洩」との猛批判を受け、今月1日付で兼務を解消している。

 ベネッセ広報は先月21日の本紙の取材に、兼務解消について「学力評価研究機構は他の教育事業系グループ会社から独立して事業を遂行する体制となるため」と説明していた。


 先週13日午前、独立した機構に直接、取材しようと、HPにある問い合わせ先に電話をすると「学力評価研究機構です」と応対した。

 ところが具体的な取材に入ろうとすると、機構の担当者は「広報窓口はベネッセの広報です」と、ベネッセの連絡先を告げたのだ。不可解に思いつつ、“別会社”であるベネッセ広報に質問すると、書面で回答が来た。 

■“別会社”「ベネッセ」が直接取材を拒否

 ――機構の社員数やベネッセとの兼務は?

「社員数全体や構成については、公表しておりません」

 ――ペーパーカンパニーとの声がある。


「ペーパーカンパニーではございません。多くの社員が業務を行っています」

 ――機構のオフィスは西新宿の三井ビルとのことですが、何階の何号室ですか。

「お取引先・関係者以外には非公開とさせていただいています」

 オフィスのフロアすら言えないとは一体どんな会社なのか。まるで戦前の秘密結社である。なお、取引先である大学入試センターも「社員数は把握していません」(総務課)とのことだった。

 同日午後4時ごろ三井ビルを訪問すると、総合案内の入居企業を表示したパネルに機構の社名は見当たらなかった。仕方なく同じビルに入るベネッセの新宿オフィスに向かうと、ベネッセ広報の電話番号メモを手渡された。結局、機構の社員には1人も会えなかった。

 利益相反や守秘義務違反などの懸念をかわす際には、ベネッセと機構が「別会社」だと強調するのに、機構への直接取材には、ベネッセがしゃしゃり出る。二枚舌の極みである。この矛盾については次のように答えた。 

 ――別会社のベネッセが広報窓口という点に納得がいかない。見解は?

「学力評価研究機構に回答を確認の上、ベネッセHD広報が窓口として回答をしています。お問い合わせにきちんと対応するための体制であり、適切な対応と認識しています」

「グループ会社から独立」どころか、機構がベネッセと一体なのがよく分かる。「共通テスト」からベネッセを完全に外した方がいい。

日刊ゲンダイ
19/12/16 15:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/266291/