1000万人の人々が往来する日韓新時代にあって、やはり最大のトゲは従軍慰安婦問題であろう。ソウルの日本大使館前の慰安婦像に眉をひそめない日本人はいない。それに乗じ、「いつまで謝らなければならないのか」と開き直り、「慰安婦は売春婦だった」と言いたい放題なのが反韓・嫌韓派であるが、それがまた韓国の元慰安婦支援団体を怒らせ、慰安婦像を世界中に作らせている。


 しかし、この悪循環に終止符を打つ動きが出始めている。鳩山由紀夫元首相がソウルの延世大学での講演(6月12日)で、「相手が『もういい』と言うまでは、真の謝罪が行われたとみなすことはできない」と語ったことが端緒となった。

 会場から万雷の拍手が湧き上がり、韓国人の琴線に触れた。鳩山氏は一躍、村上春樹に並ぶ著名な日本人となったのである。

 翌日、文喜相国会議長が鳩山氏と昼食をともにした。この文議長、今年2月に「日王(天皇)が元慰安婦の手を握り、すまなかったと一言謝れば済む話だ。戦犯の息子ではないか」と発言したとして、安倍政権から謝罪、撤回を求められているが、「真意が伝わっていない」と日本側の要求を無視してきた。その文氏が「誤解した人々がいたとすれば申し訳なかった」と、2月の発言について鳩山氏に謝ったのだ。

「なぜ鳩山氏に謝罪」と韓国マスコミは驚きつつ、鳩山氏の「真の謝罪」発言に応えたと理解を示した。韓国には「行く言葉が美しければ、来る言葉も美しい」とのことわざがある。


 日本のマスコミはこの一件について、あれやこれやと謝罪の意図を不審がっている。韓国人の心の機微を理解できないようだ。先のことわざのように、真心で対応すれば、真心で応えるのが韓国人なのである。

 実は、平成の天皇(現上皇)の韓国での評判は決して悪くない。「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫」と述べたことは知られ、「里帰り、大歓迎」と、上皇の訪韓を心待ちにする声が少なくない。「戦犯の息子」は言い過ぎだが、文氏の発言自体は韓国人の本音に近い。

 その意味で、従軍慰安婦問題は、歩み寄りの余地は大きいといえる。その橋渡し役の鳩山氏に対して、相変わらず反韓・嫌韓派は口汚くこき下ろしている。この慰安婦問題が解決してしまったら自分たちの出番が失われるという焦りの裏返しなのか。しかし、日韓の悪循環に終止符を打つ流れはもはや変わらないだろう。

(作家・河信基)

日刊ゲンダイ
19/07/07 06:00
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