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■この会談を専門家はどう見るか 朝鮮半島の非核化は動きだすのか

 30日行われたトランプ大統領と金正恩委員長との3回目のトップ会談は、なにもかも異例ずくめだった。

 現職のアメリカ大統領が北朝鮮に足を踏み入れたのが初めてなら、米・韓・北のトップ3人が肩を並べて談笑するのも、南北分断後初めてのこと。そもそも、この会談自体、トランプのツイッターによって実現したのだから前代未聞である。

 韓国側から北朝鮮に入ったトランプは「軍事境界線を越え、この場にいるのは大変光栄だ」と語り、金正恩は「トランプ大統領が境界線を越えたのは、良くない過去を清算し、良い未来を開拓しようという勇断だ」と称賛してみせた。

 この会談が、2人にとってウィンウィンだったのは間違いない。

「会談終了後、金正恩は満面の笑みを浮かべていました。あの表情がすべてを物語っています。トランプとの1対1の会談時間も過去2回より長かった。ポイントは、2〜3週間以内に実務協議をスタートすることで合意したことです。これまで北朝鮮は、協議再開の期限を年内と区切り『時間的余裕はない』とアメリカを揺さぶっていた。米朝協議が動きだせば、経済制裁も緩和されると計算しているのでしょう。一方、大統領選を控えるトランプは、北朝鮮問題が進展していると外交成果を訴えられる。2人が会ったのは、利害が一致したからでしょう」(朝鮮半島問題に詳しいジャーナリスト・太刀川正樹氏)

 ただし、北朝鮮の非核化は、そう簡単には動かないとみられている。トランプ本人も「スピードが目的ではない」と、会談後、明言している。


 元韓国国防省北朝鮮情報分析官の高永侮=i拓大主任研究員)はこう言う。

「脱北した元高官は、北朝鮮外交の3本柱は、@核は放棄しないA核を保有していればアメリカも軍事攻撃できないB中国は北朝鮮を見捨てることはできない――だと話しています。実際、北朝鮮にとって核は、体制を維持する虎の子です。最後まで放棄することはないでしょう。リビアが大量破壊兵器計画を放棄した後、欧米から空爆されたことも知っているはずです。

 そもそも、北朝鮮の非核化は簡単じゃない。相当な時間がかかる。なにしろ、核兵器を10個以上も保有し、核の関連施設は300〜400に及ぶとみられている。アメリカのハッカー博士は、完全な非核化には15年かかると予測しています」

 仮に非核化に動くとしても、北朝鮮の主張通り、時間をかけ、相応の見返りを与える「段階的核廃絶」になるのではないか。

2につづく

日刊ゲンダイ
19/07/01 17:00
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