講談社が発行する女性ファッション誌「ViVi」が10日からウェブで展開している自民党の広告企画に批判が殺到している。参院選直前にファッション誌が政権与党とコラボするのは異例で、夫婦の老後資金として「約2000万円が必要」とした金融庁の試算に対する批判もあいまって、ViViの公式ツイッターには「自民党の機関誌になったのか」「Tシャツより年金がほしい」などと怒りの声が多く寄せられている。【大場伸也/統合デジタル取材センター】

読者モデルがメッセージTシャツ

 広告企画は、袖に自民党のマスコットマークが入ったTシャツを着た読者モデルたちが「NEW GENERATION(新時代)」「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?」と呼びかけるもの。

 モデルの背中には「お年寄りや外国人に親切な国でありますように」「いろんな文化が共生できる社会に」「自分らしくいられる世界にしたい」など、モデル自身が考えたというメッセージを英語でプリント。さらに「自分の想いをツイートすると、メッセージTシャツがもらえるよ!」として、ViViの公式ツイッターやインスタグラムに投稿した読者計13人にTシャツをプレゼントするとしている。

公式ツイッターに批判「モデルさん可哀想」

 ViViの公式ツイッターに寄せられた投稿は「めちゃくちゃショックです…編集部が終わってるだけでモデルに罪はないと思いたいな」「大好きだった雑誌なのに、こんなの着せられるモデルさんたちも可哀想」「ファッション誌がファッショ誌になったんだね」などと批判的なものがほとんど。

 他にも「自民党って最低3人は子供産めのおじさんがいて、LGBT差別をする議員を辞めさせない政党だよ」「安倍政権は、まさに読者層の皆さんに年金は足らなくなるから2000万貯金しなさいと言ってるんですよ」「モデルの理想と自民党のやっていることが真逆」などの政権批判が相次いだ。

さっそくパロディーも登場

 ウェブ上ではさっそくこの広告企画を皮肉り、「NEW GENERATION」「みんなはどんな世の中にしたい? 自分の想いをツイートすると、メッセージTシャツがもらえるよ! デザインはここから選んでね!」として、「DON’T LIE YOUR LIES BREAK MORALS AND COUNTRY(うそをつくな うそは道徳と国を壊す)」「SILENCE GIVES CONSENT(沈黙は承諾の印)」など、反権威的なメッセージがプリントされたTシャツを並べたパロディー企画も展開されている。

「政治的な意図はない」と講談社

 講談社広報室は「このたびの自民党との広告企画につきましては、ViViの読者世代のような若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません。読者の皆様から寄せられておりますご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたいと思います」とコメントした。

 一方、自民党の若者向けイメージ戦略を展開する「#自民党2019」プロジェクト事務局は、取材に「より広く若者などに政治に興味を持ってもらうために始めた。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)なので批判も含めたいろんな声が出ることは想定していた。寄せられたツイートについてはコメントしない」と述べ、予定通り6月21日までキャンペーンを続けるとしている。

毎日新聞
2019年6月11日 16時06分
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190611/k00/00m/040/135000c