アングル:日韓不和を尻目に、日本の若者が追うK─POPの夢

[ソウル 1日 ロイター] - 17歳の蓮見優花さんはこの2月、日本の高校を休学して韓国に飛んだ。K─POPスターになる夢に挑戦するためだ。たとえそれが長時間の歌とダンスのトレーニングに耐え、プライバシーやボーイフレンド、さらには電話する時間さえ失うことを意味するとしても、だ。

K─POPスターを夢見る予備軍は、韓国内外で100万人とも推計されており、蓮見さんもその1人だ。ほんの数人が「研修生」に選ばれるだけという、大手芸能エージェンシー主催の非常に厳しいオーディションで勝ち残ることを願っている。

「厳しい練習を経て、自分のスキルを完璧なステージまで上げたら、デビューにふさわしい時が来ると思う」と彼女は言う。

ここでは、候補生のためにタレントマネジメント会社とオーディションの共催も行っている。世界ヒットチャートの首位に立ったボーイズグループのBTS(防弾少年団)など、この10年間で世界を舞台に爆発的な人気を博した「コリアン・ウェーブ」と呼ばれるポップカルチャーの原動力となったのも、こうしたオーディションだ。

だが、日本の若者の間で盛り上がるK─POP熱や、韓国芸能エージェンシーの日本人タレント採用に向けた意欲は、日韓対立によって損なわれておらず、このことは両国民の絆の強さを物語っている、と長年のK─POPウォッチャーは指摘する。

「日本ではBTSが大人気だ」と、日韓の外交関係者や企業幹部が集まる民間団体ソウル東京フォーラムで理事を務めるリー・スーチョル氏は言う。

<冷え込む日韓関係>

1910─1945年の日本による朝鮮半島の植民地統治に端を発する日韓両国の対立は、韓国の裁判所が日本企業による強制労働について有罪判決を下したことで再燃した。背景には、日本政府が過去の植民地支配について十分な償いを行っていないという韓国側の認識がある。

だが、日本では韓国文化やK─POP音楽の人気が高まっており、多くのファンやアーティストらは、外交上の対立など気にしていないと口にしている。

「日本人であることで批判されるかもしれないが、ステージに立って、日本人でもこんなにクールになれることを(韓国の人たちに)示したい」と16歳の川崎陸也さんは言う。

中国を上回り、米国に次ぐ世界第2位の規模を誇る日本の音楽市場は大きな魅力であり、多くのスクールや芸能エージェンシーが、日本の人材を発掘するキャンペーンを仕掛けている。

「音楽を通じて日本と韓国が仲良くなればいいと思う」。韓国語授業の休憩中、蓮見さんはロイターに語った。

すでに、日本から韓国に渡って成功を収めた例もいくつか見られる。韓国のガールズグループTWICEには日本人メンバー3人が含まれており、日本でBTSに次ぐ第2位の人気グループになることに貢献した。

この成功を受けて、TWICEの所属する韓国芸能エージェンシーJYPエンターテインメントは、日本人の少女だけで構成されるアイドルグループを立ち上げようと画策している。同エージェンシーはコメントの要請に応じなかった。

<スターへの狭き門>

芸能エージェンシーが注視する中で研鑽を積もうという日本からの志願者は後を絶たない。母国で成功した経歴を捨てて、K−POPでの名声を求める者さえいる。

BTSの熱烈なファンである母親から費用を出してもらいソウルを訪れた新津さんは、芸能エージェンシー10社のオーディションを受け、5社から合格をもらった。

竹内美宥さんにとって、日本のトップアイドルグループAKB48での10年に及ぶキャリアを捨て、この3月、研修生としてK−POPの芸能エージェンシー、ミスティック・エンターテイメントと契約することは、難しい判断ではなかったという。

実績があるにもかかわらず、彼女はボーカルのトレーニングを毎日7時間、1回2時間のダンスレッスンを週2回、さらに早朝には韓国語の授業を受けている。

(翻訳:エァクレーレン)

ロイター
2019年5月10日 / 18:37
https://jp.reuters.com/article/southkorea-japan-kpop-idJPKCN1SF0W1