21日の投開票まで1週間を切った衆院補欠選挙。注目の大阪12区補選では、自民党公認の新人候補が大苦戦している。その原因のひとつが、日本維新の会と蜜月関係で、大阪自民には冷たい安倍官邸の態度だとされ、党内には不満がくすぶる。安倍首相に補選の応援を要請しても、なかなか実現しないのだという。

 大阪12区補選は、自民党の北川知克氏の死去に伴うもの。北川氏の甥で自民新人の北川晋平候補が弔い選挙で優位とみられていた。ところが、フタを開けてみれば、維新新人の藤田文武候補が大きくリードしている。

「早い段階から総理に補選の応援を要請しているが、のらりくらりでした。官邸は、大阪の選挙は静観することで維新を側面支援しようとしている。自分とこの候補が苦戦しとるのに、大阪のダブル選でも総理は一度も応援に来なかったしね」(自民党大阪府連関係者)

首長選では基本的に首相は現地入りしない。しかし、補選は国政選挙だ。当初は13日に安倍首相が大阪入りするとも報じられたが、結局、この日に応援に入ったのは小泉進次郎厚労部会長と西村康稔官房副長官だった。さすがに、15日、甘利明選対委員長が「20日に大阪入りする」と大阪府内の会合で明言した。

■「籠池氏に来られても困る」

「そうでもしないと、大阪府連の不満を抑えることができないくらい、官邸との溝が深まっている。総理が一度も応援に入らずに負けた場合、『官邸が維新を大事にしすぎているせいだ』と戦犯扱いされかねず、今のところ、最終日の20日に大阪入りすることで調整しています。しかし、最終盤で応援に入って負ければダメージが大きいし、維新に対しても角が立つ。街頭に立てば、また森友学園の籠池前理事長が100万円を返しに来るかもしれない。行くべきか行かざるべきか、頭の痛い問題です。周辺からは『北がミサイルを撃ってくれないかな』などと冗談交じりに期待する声も上がるほどで、何らかの理由をつけて行かない可能性は考えられます」(官邸関係者)

たしかに、疑惑の舞台になった大阪で籠池氏に森友問題を蒸し返されることは避けたいだろう。加えて、問題を複雑にしているのが、新設される「万博担当大臣」だ。

 現在、参議院では2025年大阪万博に向けた特別措置法が審議中。早ければ今週中にも成立する見込みで、専任の担当大臣を置くことを盛り込んでいる。

「維新の議員を起用するわけにいかず、万博担当相には大阪選出の自民議員が就任するとみられています。しかし、ダブル選に続いて補選も負けると、大阪自民の発言力はますます低下する。万博に向けて、官邸と二人三脚の維新が存在感を増し、万博担当相は、安倍官邸と維新府政の連絡係のようなお飾りになりかねません」(政治評論家・有馬晴海氏)

 府連からは「補選の最終盤に総理が入るのでは遅すぎる」と不満の声も上がるが、大臣ポストをチラつかせて黙らせる魂胆も透ける。

 維新にいい顔したい安倍首相が、本当に20日に大阪入りするのかも分からない。補選の結果で党内がガタガタしても、安倍首相は22日から外遊予定。責任論から逃げて、高みの見物を決め込むつもりだ。

日刊ゲンダイ
19/04/16 15:00
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