首相も菅長官も「応援不要」

 こうした反省もあり、県連は3区補選を地元中心の態勢で臨む。選対幹部は「街頭演説は安倍晋三首相(64)も菅氏も呼ばない」と言い切る。総括文書では「政府追随といわれている自民党県連から脱却」するとまで言い切った。

 背景には「知事選や国政選挙で官邸が関与する度合いが年々強まっている」ことが、選挙戦に悪影響を与えているという認識がある。例えば、稲嶺恵一(85)、仲井真弘多(79)両元知事の選挙戦では、県庁OBがホテルの会議室を借り切って有権者に電話攻勢を行っていたが、そうした態勢は昨年9月の知事選ではなかったという。

 「政府追随」は、共産党や社民党などでつくる「オール沖縄」陣営が自民党候補を批判する際の決まり文句だ。

 3月3日にうるま市で開かれたオール沖縄系候補の屋良朝博(やら・ともひろ)氏(56)の集会では、後援会長を務める仲里利信元衆院議員(82)が3区補選について「国対琉球国だと思っている」とあおった。自民党県連が政府依存からの脱却を強調するのは、選挙戦を「中央と沖縄の戦い」の構図にしたいオール沖縄の戦術を封じる狙いもある。

 こうした県連の「中央離れ」は、選挙戦で訴える政策にも影響を与えている。

 知事選で、自民党推薦の佐喜真氏は辺野古移設について明確な立場を示さなかった。県連関係者は「党本部・官邸からの指示だった」と明かす。昨年2月の名護市長選などでは辺野古移設に対する考えを明示せず、経済振興に力点を置いた戦術が奏功していた。しかし、知事選では、これがオール沖縄陣営からの攻撃材料となった。

 「普天間の危険性の除去を考えたときには、いま進んでいる辺野古に移すということが現実的な問題だ」
 3区補選で自民党から出馬した島尻安伊子(あいこ)元沖縄北方担当相(54)は3月7日の事務所開きで、こう言明した。政策発表を行う前の宣言に、選対幹部は「このタイミングで言うとは思わなかったのでびっくりした。でも、これでみんなもすっきりする。有権者に説明しやすい」と歓迎した。

 態勢も政策も一新して選挙戦に臨む自民党県連。注目の補選は、21日に審判が下る。
(那覇支局長 杉本康士)