南西諸島防衛強化の一環で宮古島(沖縄県宮古島市)に新設された陸上自衛隊(陸自)駐屯地に弾薬庫が設けられ、同駐屯地の警備部隊が使用する中距離多目的誘導弾と迫撃砲が配備されることが分かった。防衛省は「弾薬庫ではなく、小銃などの保管庫」と地元に説明していたが、本紙の取材に「説明が不十分だった」と認めた。島民からは「完全なだまし討ちだ」と批判が噴き出している。 (望月衣塑子)

 宮古島駐屯地は三月二十六日に開設した。敷地面積は約二十二ヘクタールで、警備部隊三百八十人が配置された。

 同省整備計画局は取材に対し、弾薬庫の設置を認めた上で「中距離多目的誘導弾や迫撃砲は具体的に名前を出して説明しておらず、不十分だった。住民から要望があれば説明し、理解を促していきたい」とした。

同省によると、弾薬庫の面積は約二千五百平方メートル。配備される中距離多目的誘導弾は、同省技術研究本部(現防衛装備庁)と川崎重工業が開発した対舟艇・対戦車ミサイルで、全長一・四メートル、胴体直径〇・一四メートル、重さ二十六キロ。高機動車の荷台に六発の誘導弾を収めた発射器とレーダーなどの誘導システムが搭載され、同時多目的交戦や夜間交戦能力を持つ。

 宮古島駐屯地を巡っては二〇一五年五月、左藤章防衛副大臣(当時)が下地敏彦市長を訪問し、陸自の警備部隊とミサイル部隊の配備を打診。候補地のゴルフ場「千代田カントリークラブ」周辺の野原(のばる)自治会(五十六世帯)は一六年三月、千代田自治会(二十九世帯)は同八月に配備反対を決議した。

 同九月に若宮健嗣防衛副大臣(当時)が「ヘリパッドや地対艦・地対空誘導弾を保管する火薬庫を整備する計画はない」と伝えると、下地市長は「弾薬庫が一切ないと説明を受けて一安心している」と応じた。沖縄防衛局はその後、地元自治会への三回の説明会で「弾薬庫とヘリパッドは造らない。小銃などの小火器を入れる保管庫を置くだけだ」などと繰り返した。

 一七年十一月の駐屯地着工後、一八年二月には、千代田自治会が自衛隊員の自治会への加入や公民館の建て替えなどを求める陳情書を防衛局と市に提出し、事実上の容認に転じた。野原自治会も同三月に反対決議を撤回した。

 地元の市民グループ「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の仲里成繁(せいはん)さん(65)は「『小火器』『小銃』『保管庫』と聞こえのいい言葉を並べて島民に基地建設を容認させた。しかし実態は、迫撃砲や中距離多目的誘導弾を入れる弾薬庫そのものだった。政府はミサイル基地を造るためにうそをつき、住民をだました」と話している。

<南西諸島防衛の強化> 沖縄・尖閣諸島周辺の東シナ海などへの海洋進出を活発化させる中国などを念頭に、2013年12月の防衛計画大綱と中期防衛力整備計画(中期防)で打ち出された。陸上自衛隊は16年3月、日本最西端の与那国島(沖縄県)に160人規模の沿岸監視隊を新設。宮古、石垣両島(同)、奄美大島(鹿児島県)に計約2000人規模の警備部隊とミサイル部隊の配置を計画している。

東京新聞
2019年4月1日 朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019040102000140.html