■産業革新投資機構 田中社長ら9人の取締役 辞任の意向表明

「産業革新投資機構」の田中正明社長は記者会見し、社長を含む9人の取締役が辞任する意向を表明するとともに経済産業省の対応を厳しく非難しました。

産業革新投資機構の田中社長は午後1時から都内で記者会見し、みずからと、取締役会議長で「コマツ」の坂根正弘相談役ら、民間から就任した合わせて9人の取締役が辞任する意向であることを明らかにしました。

田中社長は辞任の理由について、「わたしたちはわが国の産業金融を強化するために集まった。しかし、経産省の姿勢の変化で私どもが共感した目的を達成することが実務的に困難になった」と述べました。

田中社長は役員報酬が高額だとして、経済産業省が機構側といったん合意した内容を撤回したことについて「私たちは誰一人、お金のためにやっていない。国の将来のためにわれわれが身につけた金融や投資の知見を差し出した。仮に当初、提示された金額が1円だったとしても引き受けた」と述べました。

そのうえで田中社長は「『日本国政府の高官が書面で約束した契約を後日、一方的に破棄し、さらに取締役会の議決を恣意的(しいてき)に無視する』という行為は日本が法治国家でないことを示している」と述べて、経済産業省の対応を厳しく非難しました。

また、自身の責任について、「私の責任は大変感じている。取締役は皆、大変な仕事をしている中で、それを辞めて、志のもとに集まっていただいた。そうしたことを主導した責任は重い。残務処理をしっかりしたうえで去って行く」と述べました。

「産業革新投資機構」は、第1号の案件として、最先端のバイオ医薬品などを開発するベンチャー企業に投資するファンドをアメリカで設立することを決めていましたが、これについて、田中社長は「このファンドは清算する」と述べました。

田中社長らとともに辞任する産業革新投資機構の坂根正弘取締役会議長は、辞任の理由について、「信頼関係が修復困難な状況の中で、今後、取締役会議長としてガバナンスを遂行することに確信がもてなくなった」とするコメントを発表しました。

また、アメリカでの設立を決めた第1号ファンドが清算される見通しになったことを挙げて、「人材確保と意思決定スピードが勝負を決める米国社会で成功を期待することは難しく、私が失望したのは、この点にある」としています。

ことし9月に発足した産業革新投資機構は2兆円規模の資金を持ちベンチャー企業の育成などが期待されていましたが、役員報酬などをめぐって経済産業省との関係が悪化し、発足からわずか2か月半で経営陣のほとんどが辞任を表明する異例の展開となりました。

NHKニュース
2018年12月10日 13時55分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181210/k10011741591000.html