作家の室井佑月氏が、日本の外国人労働者の問題について言及する。

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 先週、このコラムに、「この国の人々に差別がいかに恥ずかしいかという教育がなされないまま外国人労働者を呼んでしまうことは、この国の逆広報になるのではないか」という話を書いた。

 外国人に頼らなければ、もはやこの国は成り立たないというのであれば、我々は一緒に生きていく仲間として彼らを迎えるべきであると。

 今、日本には128万人の外国人労働者がいて、その中に、酷い扱いを受けている人たちがいる。

 いじめに遭ったり、職場で怪我をしても労災を申請してもらえず国へ帰れといわれたり、高度な専門技術を学ぶために日本へ来たのに福島県内の除染作業に行かされたり、残業代が1時間300円しか払われなかったり。

 現状として、そういう酷い扱いを受けている外国人労働者がいる。彼らへの対策がなされないまま、新たに外国人労働者を迎えるのはどうなのか? この国の評判はますます悪いものにならないか?

 今回は別の角度から、外国人労働者をたくさん受け入れたらどうなるかを書く。ちょうど、11月3日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に経済評論家の森永卓郎さんが出ていて、数字を出して怖い話をしていたからだ。

 森永さんは番組の中でこういっていた。

「経済企画庁(当時)の試算では外国人労働者が50万人入ってくると単純労働者の賃金が14%、100万人流入で24%下がる。今回の法案ではビルメンテナンスとか外食などに外国人を入れようとしているが、一方で政府は70歳まで働けと言い出している。高齢者が働く場所に外国人が入ってくれば、ただでさえ定年後に年収激減で苦しんでいるのに、さらに賃金が下がることになる」

 最近では高齢者の貧困が問題となっている。森永さんは高齢者を例にあげたが、ワリを食うのは高齢者だけじゃないよね。

 政府はこの国で働き手の足りないところに、外国人労働者をまわすようなことをいっている。

この国で労働力が不足しているところは、仕事がキツイのに低賃金であったり、長時間労働であったり、それなりに理由がある。

 ほんとうに働き手が足りず困っているならば、企業側も労働者の賃金を上げるなり、待遇を良くするなり、努力しなくちゃならない。

 そこをすっ飛ばし、外国人労働者を入れるとなると、今、この国でいちばん苦しい思いをしている人たちが、もっと辛い立場に追い込まれることになると思われる。

 勢いを失いつつあるこの国では、ピラミッド全体が下にひきずられていく。ほんの一部の富める者の安泰を維持するために。格差はますます広がっていく。

 そのとき政府は、外国人労働者への差別を取り締まるだろうか?

 我々のうっぷんのはけ口として、外国人の差別にも目をつむるような気がする。最悪だ。

※週刊朝日  2018年11月30日号

2018.11.22 07:00
https://dot.asahi.com/wa/2018112100022.html