作家・室井佑月氏は外国人労働者の受け入れについて、「そのための準備が必要」と不安を述べる。

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 安倍政権は出入国管理法の改正案を閣議決定し、外国人労働者の受け入れ拡大を決めた。

 海外のほかの国では、移民の受け入れが大問題になっていたりするから、この国の将来を左右するかなり大胆な決定だったと思う。

 ま、安倍首相は、

「労働力の受け入れであり移民政策ではない」

 といっているんだけどさ。いつものことだ。

 米国側がFTAと呼んじゃってる協定を、「いいや、TAG」と言い張るし、海外でこの国のファーストレディーとして活動する夫人を、「いいや、私人」と閣議決定したし。そうそう、森友問題で、「私や妻が関わっていたら、総理も議員も辞める」といっていたのに、「私や妻が贈収賄に関わっていたら」となにげにニュアンス変えてきたっけ。

 この国は超少子高齢化。労働人口が不足しているから、外国人労働者をもっと広く受け入れなきゃ、といわれれば納得もする。しかし、そのための準備が必要だとも思う。

 来年の4月から新たな制度で外国人労働者を受け入れるって、大丈夫か?

 すでにこの国の外国人労働者は、128万人だという。この国は外国人の単純労働を認めないことになっているが、あたしの生活の中でもちょくちょく出会う。宅配便、コンビニ、外食産業、この国で人手不足といわれる業種のアルバイトをしていたりする。

 たまにというか、けっこう頻繁に、外国人労働者が、うちら日本人から、横柄な態度を取られているのを目にして、嫌な気分になる。

 あたしの住む街は、海外からの旅行者も多い。でも、金を落としてくれる旅行者と、労働者への、一部、日本人の態度が微妙に違うような気がする。

 10月29日の朝日新聞に「外国人労働者『人』として受け入れよう」という、あたしの気持ちを代弁してくれる社説が載っていた。

 そこにはこう書かれていた。

<外国人に頼らなければ、もはやこの国は成り立たない。その認識の下、同じ社会でともに生活する仲間として外国人を受け入れ、遇するべきだ>と。

 そうなのだ。それが徹底してなされないのであれば、あたしは外国人労働者のこれ以上の受け入れに反対だ。

 この国が好きだから。

 差別がいかに恥ずかしいかという教育がなされないまま外国人労働者を呼んでしまうことは、この国の逆広報にならないか。

 なぜ、単純労働を担う外国人労働者の在留期間は最長5年で、その間、家族と一緒に住んではいけないことになっているの? 自民党の改憲草案では家族の大切さを謳っているくせに。つまり安倍政権は、外国人労働者を人として見ていないのでないか?

 自民党の議員の中には、在特会やヘイトスピーチ団体と仲が良い者もいる。思考がネトウヨ的な人も。

 まず、そこが変わらなければならないんじゃない? 同胞としてこれ以上、世界に恥を広めたくないの。

※週刊朝日  2018年11月23日号
2018/11/15 07:00
https://dot.asahi.com/wa/2018111400018.html