移民に開国するか、鎖国を続けるのか──臨時国会は外国人労働者50万人の受け入れ拡大をめざす入管法改正案が最大の焦点になっている。

「移民と同じじゃないか」

 安倍政権が入管法改正案を閣議決定すると自民党内や保守層から強い懸念の声があがった。この法案は「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」という国策を大転換して“労働ビザ”(特定技能ビザ)を新設、現在は原則「技能実習」目的でしか認められていない単純労働者を本格的に受け入れるものだ。

 実は、この国策大転換には“仕掛け人”がいる。

「将来の日本人を作るために、今こそ移民受け入れを行なうべきだ」

 そう提唱してきた作家・評論家の堺屋太一氏だ。堺屋氏は「成長戦略」担当の内閣官房参与として安倍首相のブレーンを務め、2016年4月に一般社団法人「外国人雇用協議会」を設立して会長に就任すると、政府の諮問会議などで外国人労働者の受け入れ拡大を提案してきた。

 同協議会は「質の高い外国人を日本のビジネス社会で最大限に活用できる環境を整える」ことを目的に掲げ、政策提言のほか日本での就労を希望する外国人を対象に上司との会話力や接客能力を評価する「外国人就労適性試験」を実施している。

 理事や顧問には、かつて「移民1000万人受け入れ構想」を掲げた中川秀直・元自民党幹事長、政府の産業競争力会議で受け入れ拡大を主張してきた竹中平蔵氏ら安倍ブレーンの学者や“開国派”の経済人がズラリと並んでいる。

 堺屋氏は安倍晋三首相出席で開かれた昨年1月20日の国家戦略特区諮問会議で持論をこう力説した。

「日本は歴史的に多くの外国人を取り入れて、その子孫は日本人として日本人社会に溶け込んで参りました。17世紀の前半や19世紀の末に日本に流入した多数の外国人が、日本の伝統文化や新しい文化・習慣の定着のために貢献したことをぜひ思い出していただきたい」

 安倍首相は会議の最後にこう総括している。

「東南アジア諸国を訪れ、クールな日本が大好きで、日本語を熱心に勉強している若者たちに出会った。彼らが日本で職に就き、母国から来た観光客に日本の魅力を直接伝えることは、両国にとって経済を超えた大きな価値を生み出す。彼らの期待に応えていかなければならないと強く感じた」

 安倍政権はこの後、関係省庁横断の「外国人材の受け入れに関するタスクフォース」を設置して入管法の抜本改正に舵を切る。堺屋氏を中心とする“開国派”のブレーン人脈が首相の背中を押したのは間違いない。

 安倍政治は「ブレーン政治」といわれる。現在、首相官邸には、堺屋氏のような民間人出身の「内閣官房参与」が14人(1人は官僚OB、2人は元議員)任命され、総理執務室がある官邸5階や内閣府の本庁舎に部屋を与えられている。

 参与は国会議員要覧や各省庁の幹部名簿にも記載されず、一般にはほとんど知られていないが、実は、彼らがこの国を動かし、移民政策をはじめ大きな政策転換を主導するケースが目立つ。

※週刊ポスト2018年11月23日号
11/12(月) 16:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181112-00000014-pseven-soci&;p=1