菅官房長官の“懐刀”を自任する大臣補佐官が近く退任するという。今国会での成立が見込まれている水道法改正案など、公共サービス改革の旗振り役を務めてきた人物だが、突然の退任発表は、「なぜ、このタイミングで?」と臆測を呼んでいる。実は、官房長官を後ろ盾に権勢をほしいままにしてきた補佐官を巡っては、怪文書も出回る騒動が起きていた。

「菅義偉官房長官の大臣補佐官を務める福田隆之氏が近く退任することが30日、分かった。関係者が明らかにした」――。31日の深夜1時に産経ニュースが配信した小さな記事が、政界では大きな話題になっている。

 福田氏は1979年生まれの39歳。早大教育学部卒業後、野村総合研究所の主任研究員を経て、2012年から新日本有限責任監査法人エグゼクティブディレクター・インフラPPP支援室長を務めていた。その時に菅長官の知遇を得て、16年1月から官房長官補佐官に就任した。民間からの登用は菅長官の一本釣りだったといわれている。

起用の理由について、菅長官は当時の記者会見で「民間資金の活用による公共施設の整備運営(PFI)に広範な識見、経験を有しており、公共サービス改革に関わる重要事項を担当してもらう」と説明していた。

「福田氏が手掛けていたのは、主に水道事業や港湾のPFIです。役所との折衝では官房長官の威光を振りかざし、ゴリ押ししてくることで有名だった。口癖は『菅長官が言っている』。『官房長官の意向なのだから、つべこべ言わずにやれ』という高圧的な態度で、陰では“黒い補佐官”と呼ばれていました」(国交省関係者)

 加計学園問題で、官邸の補佐官や秘書官が「総理のご意向」を振りかざしたのと同じ構図だ。

 書かれている内容の真偽は分からないが、永田町では、臨時国会直前から福田氏に関する怪文書が出回っていたという。

「怪文書に書かれていたのは、PFIに関連したリベート疑惑などです。民間業者の選定に介入して見返りを要求しているとか、パリ出張の際にフランスの水道業者から接待を受けていたという内容でしたね。福田氏のバックには竹中平蔵氏がいて、民間運営の市場形成で利権を独占しようとしているとか……。それらが事実ならば、水道法改正案の成立も危うくなりかねない。報道では、担当していた仕事に区切りがついた福田氏が自ら退任を申し出たとされていますが、焦った官邸側が“切った”のが実情でしょう」(自民党議員秘書)

 いやはや、日刊ゲンダイが入手した“怪文書”には、「補佐官室にポテトチップスを常備」「蕎麦の薬味のネギにも手をつけないほどの野菜嫌い」「自宅用の土産は和菓子が喜ばれる」など、役所内部の人間しか知り得ないような情報も書かれている。

「官邸が絶対的な力を持っていれば、内部情報がポロポロと漏れ出てくることは考えられません。政権中枢を直撃する怪文書騒動や補佐官の退官は、政権の力がなくなり、官邸のグリップが利かなくなっていることの証しでしょう。霞が関全体が、3選でレームダック化した安倍政権と距離を取り始めているように感じます」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

 こういう綻びから一気に崩壊まで行くケースもある。安倍政権もそろそろ先が見えてきた。

日刊ゲンダイ
2018/11/02 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240742/