内閣改造で、憲法改正を目指す団体「日本会議」があらためて存在感を示した。安倍政権も改憲に向けて万全のシフトを敷いたが、「失言リスク内閣」との評価も聞かれる。

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 2000年6月、千葉県我孫子市では衆議院選挙の投票を前に、各政党候補者の政策を聞くミニ集会が開かれていた。その日は自民党候補者の演説を聞こうと、支持政党を持たない20人ほどの市民が集っていた。

 自民党の候補者は少年法の改正案について熱っぽく語った。候補者の話が20分ほど続いた後、同市に住む会社役員の男性がこう質問した。

「子どもたちが荒れるのは、大人社会のほうにも問題があるのではないでしょうか?」

 突っかかるような言い方ではなかったというが、自民党候補者は一変。顔を紅潮させ、大声で話し始めた。

「あんたみたいなサヨク的人間がこの国を駄目にしたんだ。従軍慰安婦だとかありもしないことを言い続けて、この国の誇りを踏みにじってきたんだ」

 この候補者こそが、10月2日に発足した第4次安倍改造内閣で五輪担当相に起用された桜田義孝衆院議員(68)である。

 本誌の取材に対して桜田事務所は「そのような発言をした認識はありません」と回答するが、先出の男性はこう語る。

「自民党を上下関係なく議論できる組織にしなければならないとも話していましたが、実際は対話も人権も認めない、ということではないでしょうか。この話は桜田大臣が若いころですが、人間の素地が大きく変わるとは思えない。あの人が大臣かといった印象です」

 新内閣の評判が振るわない。報道各社の世論調査を見ても、「ご祝儀相場」はなく、内閣改造を「評価しない」が「評価する」を軒並み上回っている。

 他方、野党議員のベテラン秘書は、歓迎の声をあげる。

「総裁選の論功行賞による『在庫一掃内閣』などと言われているように、短気で失言リスクが高く質の悪い在庫も多く紛れ込んでいるのでは。能力ではなく、当選回数が多い待望組から選ばれただけだ。臨時国会が始まれば、すぐにボロが出るだろう」

 国民民主党の原口一博・国会対策委員長は語気を荒らげた。

「責任をとらずに閣内に居座り続ける人に加え、失言レベルではなく、過去にたくさんの人を言葉で傷つけたような人も入ってきた。国会の場で大臣としての資質を問うていく必要はある」

 となれば、「失言リスク内閣」とも呼べそうだ。冒頭の桜田氏は13年、放射性物質に汚染されたごみ焼却灰について「原発事故で人の住めなくなった福島に置けばいい」と発言。灰の置き場に困る福島県の関係者や避難者から反発を受けたこともある。(編集部・澤田晃宏)

※AERA 2018年10月22日号より抜粋
https://dot.asahi.com/aera/2018101700009.html