■自民党総裁選で恫喝受けた市議「本当に恐怖を感じる」

安倍晋三首相は、秘書時代に父の晋太郎氏(元外相)からこう“戒め”を受けた逸話がある。

「お前には政治家として最も大事な情がない」

 今回の総裁選で首相はその「非情」ぶりを遺憾なく発揮したが、それが本格化するのは戦いが終わったこれからだ。自民党では勝者が敗者を裁く“安倍の大獄”が始まる。

 安倍陣営の選対本部事務総長を務めた甘利明氏は「首相は了見の狭い男ではない」と言い、高村正彦・副総裁は「戦いが終わればノーサイド」と口にした。

 だが、権力闘争を知り尽くすベテラン議員は、それが建前であることをわかっている。12年前の第1次安倍政権時代に安倍首相と対立したことのある、大臣や党三役を歴任した大物政治家が述懐する。

「安倍さんは執念深い。嫌われ、睨まれたら、何年もの間、ほんの軽い役職さえ与えられない。干し上げられるとはこういうことかと痛感させられた」

 安倍首相の“粛清リスト”の一番手と見られているのが、齋藤健・農水相だ。

「石破さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれと言われた」

“ある安倍支持派議員”からそう恫喝を受けたことを暴露したが、首相自身が「角福戦争の頃はこんなものじゃない」と半ば恫喝を黙認したことから、勢いづいた安倍陣営から「あんなことをうじうじ言ったら価値が下がる」(甘利氏)と集中砲火を浴びた。

「齋藤は男を下げた。総理は石破を支持した連中は絶対に使わないから、“これで内閣改造で齋藤を切る理由ができた”とかえって喜んでいる」(安倍側近)

 恫喝対象は石破支持派だけにはとどまらない。西日本豪雨時の「赤坂自民亭」での宴会写真をネットに公開したことでも知られる西村康稔・官房副長官サイドから、「石破を応援するな」という圧力があったことをフェイスブックで明らかにした岡田裕二・神戸市議が語る。

「最初、私は安倍支持でした。それが官房副長官という権力側にある人物が県議、市議にまで圧力を加えてくるという異様な状況を許せないと石破支持に気持ちが変わり、フェイスブックにも載せた。実は、圧力は今も続いていて、党からは取材は断われといわれ、地元ではまるで私が妄想話をしているような噂まで立てられています。権力側に恫喝されると本当に恐怖を感じる」

 官邸が全国各地の石破氏の遊説先の府議や県議に「応援するな」「遊説させるな」と圧力をかけたことは多くの証言があるが、応援を止められないとわかると、地元選出の安倍支持派の国会議員が“連帯責任”を問われた。

「安倍支持派の細田派議員のもとに官邸から電話が入り、『あんたのところの地方議員が石破の街頭演説に一緒に出るそうじゃないか。地方議員も管理できないのか』と猛烈なプレッシャーがかかった。その話が伝わって、“首相は出身派閥の細田派でも容赦しないのか”と震え上がった」(安倍陣営の議員)

 地元をまとめきれなかった安倍陣営の議員たちまでも“粛清”の恐怖に怯えている。

※週刊ポスト2018年10月5日号
9/21(金) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180921-00000008-pseven-soci