日銀はもう動かないのか――。株式市場が疑心暗鬼になっている。

 日銀は金融政策の一環として、年6兆円規模の上場投資信託(ETF)を購入しているが、先週は“買うタイミング”がきてもジッとしていたのだ。

「しかも2日連続で動きませんでした。過去、そんな例はなかっただけに、日銀は本気で株を買うのをやめたのか……と落胆する証券マンが続出しました」(市場関係者)

 日銀は今年に入ってから、午前中の取引でTOPIX(東証株価指数)が0.3%以上下落したときにETFを購入してきた。ところが、先週の15日と16日は下落率が0.4%を超えたにもかかわらず“買い発動”しなかった。

「黒田総裁は7月の金融政策決定会合後の会見で、ETF購入に関して『市場の状況に応じて変動する』と、購入額の減額をにおわせていました。ただ、先週はトルコ・ショックで株価が大幅下落しただけに、必ず買ってくると踏んでいたのですが……。もしかすると、動かなかったのではなく、動けなかったのかもしれません」(株式評論家の倉多慎之助氏)

今週23〜25日は米国で、各国の中央銀行総裁らが集結するジャクソンホール会議が開かれる。米FRBのパウエル議長も出席する重要イベントだ。

「その直前だったので、日銀は動けなかった可能性があります。なにしろ日銀の大規模金融緩和は、海外から見たら円安誘導と映りかねません。トランプ米大統領が、日銀は為替操作していると批判する恐れも高まっています」(金融関係者)

 市場は黒田日銀のステルステーパリング(隠れた出口戦略)が始まったと囁く。

「黒田日銀の金融緩和策は5年が過ぎようとしています。この間、日銀は大量の株を買い、多くの企業で実質的な筆頭株主になっています。もうこれ以上は買えないという現実があると思います」(株式評論家の杉村富生氏)

 黒田日銀は目標に掲げた「物価2%上昇」を達成できずにいる。ETF購入も限界がきた。「もはや黒田総裁にやれることはない」という声が、市場から漏れてくる。

日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/235782