一体、何のために広島に行ったのか。6日、広島市の平和記念公園で営まれた「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)に出席した安倍首相。被爆者7団体の代表らとの面会では、被爆者側から昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約への批准を求められたにもかかわらず、「実践的な取り組みを進める」とノラリクラリ。被爆者側は「私たちの要望に聞く耳を持たず、腹立たしい」(広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長)とカンカンだったが、今の安倍首相に何を言っても無駄。アタマの中は「総裁3選」しかないからだ。

■視察は6カ所98分

 広島は7月の西日本豪雨災害で100人以上の死者を出した。全半壊や床上・床下浸水した住宅は計1万5000軒近くに上り、被災者は今も不自由な避難所生活が続いている。

 平和記念式典に出席するために広島を訪問するとはいえ、マトモな感覚を持った政治家であれば、少しでも早く現地入りし、豪雨被害の状況を確認したり、復興支援に向けた被災者の切実な思いに耳を傾けたりしたい――と考えるだろう。ところが、安倍首相は違う。「首相動静」を確認する限り、被災者のことなど、これっぽっちも考えていなかったことがよく分かる。

 安倍首相が広島入りしたのは5日。当日朝は午前11時近くに都内の私邸をゆったりと出発。羽田空港から空自の支援機で広島空港に向かい、到着したのは午後0時37分だ。ここから東広島市のJR山陽線の崩落現場や熊野町民体育館、呉市の土砂災害現場などを視察したのだが、注目は現場の滞在時間。視察場所6カ所で計98分。つまり、1カ所あたり、16・3分しか滞在していなかったのだ。

 そして午後5時過ぎには広島市内の「グランドプリンスホテル広島」にチェックイン。被災者が狭い避難所暮らしを余儀なくされているのに、1泊20万円以上(スイートルーム)ともいわれるホテルに平気で泊まる神経が理解できない。これで「視察」とはよく言えたもの。どうみても単なる「立ち寄り」「観光」ではないか。

 他方、たっぷりと時間をかけたのは、自民党の岸田政調会長とのディナー会談だ。ホテル22階の高級ステーキ&シーフード店「ボストン」で午後7時32分から始まった会食は101分。被災現場や避難所の滞在時間よりも長〜く時間を費やした。

「会談内容は明らかになっていませんが、おそらく安倍3選を支持した岸田さんへのお礼と次のポスト、地方票の動向などについて話をしたとみられています」(与党担当記者)

 政治評論家の山口朝雄氏がこう言う。

「平和記念式典の出席はともかく、広島の被災地視察は行きたくなかったのが本音だったのではないか。そう受け取られても仕方がないでしょう。もう何をやっても3選は大丈夫とタカをくくっている。自分の行動が世論にどう受け止められるかなど全く頭にないのでしょう」

 地方の自民党員はこんな男がトップで本当にいいのか。

日刊ゲンダイ
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