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 政局の行方を左右するともいわれた10日投開票の新潟県知事選は、自民、公明両党の支援を受けた元海上保安庁次長の花角英世氏(60)が、野党6党派が支援した元県議の池田千賀子氏(57)との事実上の一騎打ちを制した。政党色を打ち消し、国会議員があまり表に出ない“ステルス作戦”を展開した花角陣営と、野党の幹部級が次々と入って安倍晋三政権批判を繰り返した池田陣営。勝敗の分かれ目はどこにあったのか。

 「国の政治はとんでもない状況だ。安倍首相の嘘を守るために、みんながこぞって嘘をつく。こんな政治はもう終わりにしよう。池田氏を当選させ、首相に引導を渡そうじゃありませんか」

 選挙期間中の2日、新潟市内で開かれた野党6党派の代表らによる合同街頭演説会。マイクを握った共産党の志位和夫委員長(63)は花角氏を「与党丸抱えの候補」と断じ、安倍政権批判を展開した。他の党派の代表らも同様に、安倍政権を痛烈に批判することを忘れなかった。

 国民民主党の大塚耕平共同代表(58)は森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題にからみ「事実を隠蔽し、改竄し、廃棄し、そして熟議を避けて権力を乱用する。こんな政治、許せますか」と主張。自由党の小沢一郎代表(76)は「原発政策を考えたときに、これほど危険な政権はない。この選挙で安倍政権を交代させることができる」と声を張り上げた。

 こうした主張を野党側が繰り返したのは、今回の知事選が政権審判の選挙であると印象づける狙いがあったためだ。確かに今回の知事選に勝てば安倍政権に大きなダメージを与え、来年の統一地方選や参院選での躍進につなげることができる。

 一方で野党幹部が大挙して新潟に足を運び、安倍政権批判を執拗に展開したことは、池田陣営が掲げた「新潟のことは新潟で決める」というキャッチフレーズと矛盾し、空虚に聞こえた。

 なり振り構わぬ野党の政権批判は度を超すこともあった。2日の合同演説会で地元選出の森裕子参院議員(自由党)が花角氏の経歴について「NHKで花角さんの政見放送を見てびっくりしました。大阪航空局長だったんですって!」と語り、「大阪航空局長」を連呼した。森友学園問題と絡めて花角氏を攻撃したのだ。

 しかし、国土交通省出身の花角氏が大阪航空局長だったのは平成24年11月まで。大阪航空局が財務省近畿財務局に国有地の売り払いの処分依頼をしたのは25年4月、近畿財務局が公的取得要望を募集し、森友学園が小学校用地取得の手続きを照会したのは同年6月で、花角氏の転任後だった。

 森氏の発言が呼び水となったかどうかは不明だが、インターネット上では「(花角氏が)大阪航空局長の経歴を隠している」「元大阪航空局長は信用ならない」といった中傷が拡散し、花角氏が3日に自身のツイッターで事実関係を説明する事態となった。

 こうした野党陣営に対し、ネット上では「政権批判がひどすぎた」「国政が出張ってこなければ勝てた」などと批判的な指摘が相次いだ。

 ちなみに選挙期間中には、柏崎市立保育園の保育士が、池田氏を応援するポスター作成を園児に手伝わせたことも明らかになった。公務員らの地位を利用した選挙運動を禁じた公職選挙法に抵触する行為だ。

(略)