4月3日、衆議院院内幹事長室。自民党副幹事長会議で笑い声が響いた。

「昨日、衆議院(議員)の資産が公開されたが、幸い、幹事長室のメンバーでベスト30に入った人は一人もいなかった(笑)。身を寄せ合って頑張りたいと思います」

軽口を叩いたのは、「安倍親衛隊」の一人、幹事長代行の萩生田光一だ。

共感するように爆笑したのが、同席した筆頭副幹事長・小泉進次郎だった。なにを隠そう、進次郎が前日に公開した資産は、「ゼロ」だったのだ。

不動産はおろか、株式など有価証券もゼロ。預貯金も1円もないという。

いくら何でもゼロはないだろう、ゼロは――。

そもそも、37歳になる進次郎は、カネのやりとりに厳しいことで有名だ。

「銀座の高級店や赤坂の料亭なんて、絶対に使わず、1人5000円ぐらいの居酒屋ばかりです。

そして議員がいようがいまいが、飲み代は必ず割り勘です。『僕はバッジを付けているから、みんなに迷惑をかけたくないんだ』と言っていましたね」(親しい自民党代議士)

「選挙応援に来てもらったときも、お車代やお土産も受け取ろうとしない。進次郎さんが徹底しているようです」(後輩議員)

昼も安い弁当で済ませることが多い。「小泉派結成か」とも勘ぐられた、3月に開始した「若手勉強会」(2020年以降の経済社会構想会議)では、出されたのは、豪華弁当でもなんでもなかった。

「『よこすか海軍カレー』のカレー味柿ピーですよ。居酒屋のような一体感を出したかったんでしょう」(勉強会の出席議員)

「一筆を添えた名刺と、柿ピーの大箱が届きましてね。相手に気を遣わせまいとして、高級な和菓子なんかは避けるんでしょう。やっぱり、気遣いに感激しましたよ」(同)

3月29日の勉強会後、加藤鮎子や鈴木隼人ら出席議員とともに行われた懇親会も、六本木の居酒屋で会費制にて行われた。

「毎回、一人一人のところに席を移しては『飲んでますか?食べてますか?』と言う姿は印象的ですね。同席した党の職員などにも、まったく偉ぶらずに同じ態度ですよ」(懇親会の参加者)

(略)

しかし――収入のほうは、実は十分にある。

進次郎の議員歳費は年間1942万円。これに、使途明示不要の文書通信費が年間1200万円。

進次郎が持つ3つの政治資金管理団体の'16年分収支報告書を確認すると、1年間の収入総額は、8522万円(団体間のカネの動きを除く)。歳費・文書通信費と合わせ、1億円を超える「年収」を得ていると言ってもよい。

収入のうち、大きな割合を占めるのが、「モーニングセミナー」という政治資金パーティ。年7回で4469万円の収入だ。

「大人気ですから、政界以外からも膨大な出席者が集まり、羨ましい限りですよ。事務所の経費なんて、すぐに賄えます」(別の自民党代議士)

実際、年間8522万円の政治団体の収入から、横須賀の事務所賃料(合計月額約38万円)や秘書人件費、車のリース代などが支払われている。

だが、ここまでカネに恵まれていて、預金がゼロとはどういうわけか。父の代から「金庫番」を務める鍋倉正樹氏を横須賀の事務所に訪ねたが、「うちは取材を受けないことで有名だから」と答えるばかり。前出の代議士が代わって説明する。

「預貯金がゼロと言っても、普通預金の残高は公開する義務がありません。普通預金口座に歳費などを預金しているのでしょう。不動産や車がないのも、政治団体の資金でまわせているからです」

3政治団体で、1年間の収入から支出を引いた額は翌年に繰り越しされる。現在、繰り越しの総額は1億6561万円。進次郎は、この「貯金」を自由に政治資金として利用することができるわけだ。

(略)

「活動は、すべて歳費で賄え。利権とかカネのからむことには、絶対に関わらないようにしろ」

父はこう口を酸っぱくして言っているという。

間もなく、進次郎は初当選から10年になる。天下取りも嫁取りも、いよいよ現実的なものになるかもしれない。

現代ビジネス 2018年6月10日
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55277