加計学園が“嘘”をついたと謝罪し、愛媛県の“告発”をなかったことにした安倍晋三首相。佐川宣寿氏ら38人の不起訴処分で森友文書改ざん問題とともに幕引きを図る。だが、財務省が公表した4千ページに及ぶ文書の黒塗りを剥がすと、安倍夫妻に不都合な真実が浮かび上がってきた。

 1年半ぶりに国会で行われた党首討論の翌日の5月31日、加計学園の渡辺良人事務局長らが愛媛県と今治市を訪問し、“嘘”を謝罪した。

 安倍首相と加計孝太郎理事長が2015年2月25日に面会した際のやりとりなどを記した愛媛県の公文書が公開され、国会で問題化。その報告者として名指しされた加計学園は後日、慌ててマスコミにあてたファクスで<当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまった>と釈明した。

 文書を公開した中村時広愛媛県知事に批判され、謝罪に訪れた渡辺事務局長は、記者団に苦しい弁明を繰り返した。

「嘘で認可になったのではない。県と市と加計学園で頑張った」

 その一方で、愛媛県文書に記載されている内容については、安倍首相と加計理事長の面会以外は「正しい内容」と胸を張った。

 しかし、愛媛県文書の記述では、県と今治市に加計学園が会合の申し入れをした理由は、<加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいと申出>があったとなっている。

 また、同年3月15日に再度、加計学園と市は会合したが、そこでも<理事長と総理との面会を受け、同(柳瀬唯夫・首相)秘書官(当時)から資料提出の指示あり>などと記されている。記者にここを突っ込まれると、「3年前のことではっきりと覚えていない」としどろもどろ。

「事務局長は加計理事長の側近中の側近で酒席にはほとんど同席している。加計理事長に責任が及ぶような嘘を県と市に話すわけがない。それも理事長の腹心の友、安倍首相に関する話ですよ。事務局長は奥様を早くに亡くされ、再婚した相手が理事長の信頼が厚い弁護士の親族。事務局長の息子たちも加計学園系列の職員です。自ら泥をかぶり、理事長と首相を救ったんじゃないかと、学園ではもっぱらウワサになっています」(加計学園関係者)

 一方、財務省は森友文書改ざんの“主犯”として6月4日、佐川氏や理財局の中村稔総務課長らを停職などの処分に。これまで疑惑の渦中で、数々の“舌禍”を起こした麻生太郎財務相は早々に続投が決定。結局、政治家は誰も責任を取らぬまま、幕引きとなった。

「今や財務省内の最大の関心事は事務次官人事と19年10月に予定されている消費増税です。麻生財務相は自分が辞めたら安倍政権は持たないと公言し、消費増税に道筋をつけるという大義名分で居座り続けるつもりです。そうすれば、自然と安倍3選の流れになるという腹づもりなのでしょう」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏)

 安倍政権がここまで強引に幕引きを図るのには理由があった。その鍵となるのが、財務省がホームページ上で公表した約4千ページにのぼる森友学園との交渉記録や改ざん前の決裁文書だ。だが、財務省はあるミスを犯していた。当初、文書は5月23日に公開されたが、約3時間後にすべて削除。翌日未明に改めて公表し直された。なぜこうなったかというと、パソコンである操作をすると、黒塗りで隠した部分が簡単に見えるようになっていたからだ。

 そこで本誌は当初、公表された文書から黒塗りされた箇所をすべて剥がし、改めて内容を精査。すると、不都合な安倍人脈が浮かび上がってきた。

つづく

週刊朝日  2018年6月15日号
https://dot.asahi.com/wa/2018060600017.html