加計学園の獣医学部新設をめぐり、事前に加計孝太郎・加計学園理事長と安倍晋三総理が面会していたとされる問題が迷走を重ねています。「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、(愛媛)県と(今治)市に誤った情報を与えてしまった」と主張している加計学園の渡辺良人事務局長が、愛媛県庁を訪れて謝罪しました。

 すでに加計側の言い分を信じる人はほとんど存在しないでしょうが、それにしてもあまりにお粗末。前回のコメント発表時には”騙した相手“の県と市に事前連絡もせず、記者会見もせずに、いきなり報道機関にFAXを送りつけて中村県知事の怒りを買っています。その後、アポなしで県庁を訪れ、さらに怒りを買いました。さらに今回は知事の海外出張中を狙っての謝罪訪問。何を考えているのやら…。

 「総理と理事長の面会は実在しなかった」という学園の説明は信用に値しません。たぶん会っているのでしょう。ですが面会が本当に学園による捏造だったら、それはそれで大変な問題に発展します。加計学園が、県や市からの補助金を吊り上げるため、理事長と総理との面会をでっち上げたことになるからです。

愛媛県の文書を振り返ってみましょう。2015年3月3日、「加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいと申出があり」県と学園が打ち合わせを行いました。その際の文書に、安倍総理の「いいね」という発言や、「柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があった」という報告が載っています。

同時に、学園は県に対して、多額の費用負担は一私学では困難だとして「県・市の財政支援をお願いしたい」という要請を行っています。一定の財政支援は構造改革特区提案の当時から織り込み済みでしたが、その費用の大幅な拡大が懸念されていたようで、県側にはやや腰が引けた様子がみられます。

同年3月15日には、学園は今治市に対しても同様の報告を行いました。県はその内容について、市からの報告に基づいて文書をまとめています。そこには、より生々しいやり取りが残されていました。

『 「(市)今回の構想の実現に関しては非常に巨額の資金が必要とのことであるが、今治市としては、50億円の支援と用地の無償提供が限界である。その中で資金計画を練ってほしい。

 また、県からも協力をいただけると思っているが、県としても厳しいとの話は受けている。≪加計学園からの反応なし≫」』

 市の補助金は50億円以内という従来の合意を超えて、学園側はさらなる上積みを求めています。そのための“撒き餌”が総理との面会だったことになります。のちに、学園に市から93億円(うち31億円が県負担)の補助金が提供されることになりました。市が「限界」と明言した50億円を大きく上回っており、虚言の動機は補助金を吊り上げるためだったと言われても仕方ないでしょう。

 ここまで読んで、「あれ?」と思う人がいるかもしれません。だって、安倍総理との面会は、実際に存在した可能性が高いのです。その場合は、どういうことになるのか。でっち上げではないので、不正行為による補助金吊り上げとは言えません。しかし、総理の威光を使って、補助金の吊り上げ交渉をしていたという事実は変わりません。実はそれこそが加計問題の本質なのです。

 柳瀬首相秘書官は県と市の職員に向かってこう言っています。「本件は、首相案件となっており、何とか実現したい」「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」「確認だが、愛媛県・今治市の両首長がやる気である、ということで間違いないか」―。まるで、学園を代弁して、県と市にねじこんでいるように聞こえないでしょうか。

 この問題以前から、加計学園グループは自治体等から巨額の補助金を引き出すことで拡大を繰り返してきました。加計学園は一種の政商であり、補助金はそのビジネスモデルの根幹です。92億円の補助金を受けて開設された加計傘下の千葉科学大学10周年記念式典には、安倍総理本人が出席しました。現職総理としては、異例中の異例です。2011年には「元首相」として加計学園50周年式典で挨拶しています。

また、安倍昭恵総理夫人は加計問題の発覚まで、加計学園系列の認可外こども園の名誉園長を務めていました。15年にはオバマ大統領夫人(当時)を連れて、加計学園の米国姉妹校を訪問しています。13年には加計学園とフィリピンの日本語学校との提携調印式に出席しています。同年、加計系列の小学校が行った教育説明会のチラシには「功労者」としてコメントを寄せています。



つづく

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