麻生太郎財務相の悪癖である”舌禍”騒動がやまない。

「セクハラ罪っていう罪はないという事実を申し上げている」(5月8日)と閣議後の会見で“持論”を言い張ったものの、財務省は発言を打ち消すように翌9日、幹部ら約80人を集めてセクハラ研修を開いた。

 講師を務めた菅谷貴子弁護士は「財務省の感覚と世の中の常識が非常にズレている」「セクハラは人権侵害の問題であり、刑事事件にもなりうる大きな不祥事であることについてしっかり認識していただきたい」などと釘を刺した。

 自民党派閥領袖がこうぼやく。

「麻生さんにセクハラが深刻な問題だという理解はない。そもそも市民感覚が0なので、“舌禍”を何回も繰り返す。吉田茂の孫で妹は皇室へ嫁いでいるから、プライドの塊。初出馬の時、『下々のみなさん』と演説を始めたぐらいです。財務相の仕事はほとんどせず、事務方に任せっぱなし。彼からみれば、セクハラで辞めた福田(淳一前事務次官)、佐川(宣寿前国税庁長官)も忠実な下々。なぜ、こんな問題で辞めないとダメなのか、という感覚しかない。新聞も安倍政権びいきの産経新聞しか読まず、状況をまったく理解できていない」

 安倍晋三首相、菅義偉官房長官、二階俊博自民党幹事長さえも、麻生財務相へ注意や苦言は難しいという。

「麻生さん自身、自分は聖域と思っている」(前出の領袖)

 確かに麻生財務相の発言を振り返ると、“舌禍”のオンパレードだ。(別表参照)

 森友疑惑で財務省の公文書改ざんが明らかになり、近畿財務局の職員が自殺した直後でさえ、「みんな森友の方がTPP11より重大だと考えているのが、日本の新聞のレベル」と放言し、撤回に追い込まれた。

 2013年1月には、終末期医療療に言及した際、末期の患者を「チューブの人間」と表現し、「さっさと死ねるようにしてもらわないと」と言い放った。

 同8月には憲法改正に絡み、「ナチス政権の手口に学んだらどうか」と発言し、大炎上した。

 そして安倍政権の最大の試練とされる森友疑惑追及の最中でも、懲りずに“舌禍事件”を起こし続けている。なぜ、麻生財務相の失言は止まらないのか。政治ジャーナリストの角谷浩一さんはこういう。

「なぜ批判されているのかわかっていない。人権意識が欠けていて、時代の変化についていけず、今も昭和の政治から抜けきらない。30年以上前なら許された発言を今もしている。ただ、本人は時代が変わったことが悪いと思っているから失言も直らない。ついイラっとしてしまったときに失言をしてしまう。だが、その癖を改めることもできないのです」

 今後、一連の財務省の事件の責任をとって辞任という展開はあるのか。

「仮に辞任があったとしても、麻生さんの価値観は変わらないでしょうね。安倍自民党の体質が変わらないので、こうした問題は容易には解決しないでしょう。野田聖子総務相も当初はセクハラについて罰則化を主張していたけれど、麻生さんのセクハラ放言についてはだんまりです。安倍政権にはもはや“凡庸な悪”がはびこっています」(前出角谷氏)

 今後、国会で野党は麻生財務相をどこまで追い詰めることができるのか。(AERA dot.編集部 森下香枝、福井しほ) 

表はWebで

AERA.dot
2018/5/9 20:00
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