「安倍政権には基本的な良心が欠けている」村上誠一郎・元行革相が徹底批判

安倍晋三首相の政権運営に一貫して物申してきた村上誠一郎・元行革相。 自民党の大ベテランは本誌に、「即刻退陣すべきだ」と言い切った。

安倍晋三政権の姿勢は民主主義の崩壊と国会、国民軽視に尽きる。森友学園や私の選挙区の加計学園(獣医学部が今年4月開学)の問題で度重なる公文書の改竄や情報の隠蔽を行った。国民の知る権利をほごにする異常事態だ。日本の民主主義は崩壊の危機に瀕している。国民の政治・行政不信という重大事態を招き、国会(国民)を軽んじる安倍氏の政治責任は極めて重い。安倍、麻生(太郎財務相)両氏は即刻退陣すべきだ。

 森友学園のごみ撤去費に関して、財務省から学園側に口裏合わせの要請が一度ならず繰り返されていた。会計検査院も値引きの根拠に疑義を呈している。次々と露呈する官僚(行政)の「不都合な事実隠し」。政権にはびこる「無責任体質」が行政全体にまで広がっている。ひどい状況だ。疑われているのは、「安倍夫妻」の関与による特別扱い。安倍氏自らが真相解明に全力を注ぐべきだ。

 自衛隊のイラク派遣部隊の活動報告(日報)も「なかった」と言っていたが、連日のように次々と見つかっている。日報は自衛隊の活動を検証し、将来の教訓にするための貴重な資料。ずさんに扱い、また平然と隠そうとして、責任感はどこにあるのか。

 なぜ隠すのか? 政府は自衛隊の海外派遣について、違憲の疑いが指摘され、そのうえ現地の状況が悪化しても、「問題ない」としていた。整合性をとるために情報をゆがめる必要があったとしか考えられない。

 一連の隠蔽の裏には、「政策検証のために情報を国民に明らかにしなければならない」という基本的良心の欠如がある! このままでは民主主義は危ない。

 最近、安倍、麻生両氏は自分の責任を放棄して、やれ「財務省が悪い」「防衛省が悪い」「文部科学省が悪い」「厚生労働省が悪い」と、公務員の責任にして逃げている。最高責任者としてあるまじき行為だ。

 経済政策も転換しなくてはならない。アベノミクスは、(1)消費税率の引き上げを2回も延期し、財政は限界に来ている(2)日銀の金融緩和も副作用が出つつある(3)肝である成長戦略はいまだにこれといったものが出てきていない。実質的に、賞味期限が切れて頓挫している。

得意なはずの外交も、(1)日米関係は鉄鋼・アルミの関税問題でトランプ大統領が「いつまでも米国を利用できると思うな!」と言っているように、緊密な関係でなくなっている(2)北朝鮮問題は「米・中・韓」のカヤの外に置かれている(3)日ロ関係は経済援助のみ取られ、領土問題は一歩も前進しない。結局、外交政策も破綻している。

 沖縄についても、先日お別れの会が開かれた野中(広務・元自民党幹事長)先生は、「温かい心で接していただきたい」と言っておられた。しかし安倍政権の対応を見ていると、野中先生の気持ちを理解しているようには思えない。本当に安倍氏の心の奥まで響いたのか。

 政治家は次の世代に対し、責任を持たなければならない。そのために経済政策として、(1)財政の立て直し(2)金融緩和の出口戦略(3)税と社会保障の一体改革──この3点を喫緊の課題として取り組まなければならない。社会保障も受益と負担のギャップを埋め、現在の「高福祉・低負担」から「中福祉・中負担」を目指すべきだ。

 外交も、安全保障とは敵を減らして味方を増やすことであり、中国、韓国など近隣諸国との関係改善に一日も早く取りかからなければならない。

 目先の人気取りに傾き、長期的な視点を忘れたままではいけない。安倍政権は、よりよい社会を次の世代へバトンタッチすることを最終目標にすべきである。自分の選挙やポストのことばかり考えているとすれば、政治家にとっては「死」にほかならない。

 いずれにせよ、後任の総裁に誰がなっても、皆で全力で支えていくしかない。(構成/ジャーナリスト・村上新太郎)

※AERA 2018年5月14日号
https://dot.asahi.com/aera/2018050800036.html?page=1