■ささやかれる安倍退陣Xデーとそれまでのシナリオ

独裁者の末路は、いつも哀れだ――。この5年間、日本を破壊してきた安倍首相の終わりがいよいよ近づいてきた。

 早くも小泉純一郎元首相は、「安倍さんの引き際、国会が終わるころじゃないか」と“6月総辞職”を予告している。政界も“安倍退陣”を想定して動きはじめている。

 安倍退陣のカウントダウンは、麻生財務相の辞任が号砲になるとみられている。麻生の辞任は、早ければ連休明けだ。

「麻生財務相が辞任したら、一気に総辞職のムードが高まっていくはずです。安倍首相が防波堤を失うだけではありません。これまで安倍さんを支えていた麻生派も政権から距離を置くようになるでしょう。なにより、政権発足以来、閣内にいた盟友の麻生さんが去ったら“安倍政権は終わった”という空気になりますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)

いま政界が注目しているのが、いわゆる“青木理論”と呼ばれるモノだ。内閣と党の支持率を足しても50%を切ったら、政権に赤信号がともる。例えば朝日新聞では、現在、内閣支持率は31%、党の支持率は33%である。党の支持率まで下がりはじめたら、安倍批判が噴出するのは確実だ。

 それでなくても、来年は春の統一地方選と夏の参院選があるだけに、大手紙の調査でも内閣支持率が30%を割ったら、地方から「安倍首相では戦えない」と、安倍降ろしが勃発するのは間違いない。

「安倍さん本人は、まだ辞めるつもりはないようです。でも、10年前、国会で所信表明を行いながら、その2日後に政権を放り投げた前科がある。あの時の再現も囁かれています。安倍首相にとって絶望的なのは、もう政権を浮揚させるカードがないことです。外交もボロが出た。モリカケ疑惑も終わりそうにない。支持率が30%を大きく割り込み、“総裁3選”が絶望となったら、プツンと気持ちが切れて、突然“総裁選不出馬”を表明してもおかしくない。体調もかなり悪そうです」(政界関係者)

 国民の支持を失っても、安倍が政権にしがみつこうとしたら、自民党は“昭恵喚問”を認める可能性がある。さすがに、昭恵夫人の証人喚問を突きつけられたら、安倍も総辞職を受け入れざるを得ないだろう。国民を苦しめた政権も、ようやく終わりの時期が迫っている。

■政権タライ回しに蠢く自民党党内政局の腐臭

安倍の“3選出馬断念”が濃厚となり、俄然、騒がしくなってきたのが「ポスト安倍」をめぐる自民党内の派閥の動きだ。

 財務省の福田淳一前次官が辞任表明した当日(4月18日)、派閥パーティーを開いていたのは岸田派。“禅譲”狙いでいつも羊のような岸田文雄政調会長が、「いざという時はやる」と珍しく気を吐いたのだが、乾杯の音頭を取ったのは、実質的な派閥オーナーである古賀誠名誉会長だった。実はポスト安倍を狙う本人たち以上に、かつてのドンたちが水面下で蠢いている。

 誰が次期首相に就くのか、カギを握っているのが、古賀、自民党の参院会長だった青木幹雄、現幹事長の二階俊博の3人だ。

「古賀さんと竹下派OBの青木さんは事務所が同じ建物内にあり、2人は今年9月の総裁選を見据えて、昨年末から頻繁に話をしています。『通常国会が終わったら動く』ということでしたが、安倍3選が難しくなってきたことで、動きが早まりそうです」(自民党関係者)

古賀と青木。担ぐ人物が必ずしも同一というわけではない。ただ2人は「安倍1強のままでいいのか」という一点では一致している。青木の元へは、派閥領袖でもある二階も通っているという。

「派閥同士の会合がしょっちゅう行われ、腹の探り合いが始まっています。流れを決めるキーマンは、政高党低を不満に思ってきた二階幹事長でしょう。記者会見などで聞かれれば、安倍3選について『一分の変わりもない』と答えていますが、内閣支持率がさらに落ちたり、地方議員から『これでは選挙が戦えない』と突き上げられれば、安倍降ろしに舵を切るのではないか。二階さんは連立を組む公明党とのパイプも太い。公明党と組んでの安倍降ろしということもあり得るでしょう」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

 私物化政権の後は、派閥の主導権争いとドンの暗躍……。腐臭が漂ってくる。


日刊ゲンダイ
2018.05.03
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/228298/2