財務省が公文書を改竄、自衛隊も日報を隠し、そしてまた新たな問題が浮上した。炎上続きの安倍政権に対し、突き放す声が自民党内でも大きくなってきた。

「私を嘘つき呼ばわりするなら、証拠を示していただきたい」

 テレビで全国生中継されている国権の最高機関の場で居直ろうとした日本国総理大臣に驚いたのは、答えを引き出そうと質問した野党議員だけではあるまい。そもそも「首相案件」と記した文書が「新証拠」として見つかったことを受けての質問である。森友学園、自衛隊の活動記録(日報)、加計学園。次々と政権の急所をえぐるような新証拠が現れるのに、それがズブズブと底なし沼に沈んでいく。国家が、溶けていく。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡って、財務省が決裁文書を改竄し、大幅値引きの「根拠」となるごみの搬出量も捏造して学園側に口裏合わせを依頼していた問題に続いて浮上したのは、安倍晋三首相の親友、加計孝太郎氏が経営する学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る文書だ。朝日新聞などが4月10日に報じたこの文書は、2015年4月2日に官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時。現在は経済産業審議官)と藤原豊内閣府地方創生推進室次長(同)に面会した愛媛県職員が作成し、同年4月13日の日付と「地域政策課」の文責が記してある。

●力の入った助言を列挙

 文書では柳瀬秘書官の主な発言として「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と始まり、構造改革特区より国家戦略特区の方が勢いがある▽自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件▽四国の獣医大学の空白地帯が解消されることは農水省・厚労省も歓迎する方向──など力の入ったアドバイスを列挙。さらに「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」と記されていた。藤原氏との面会内容として「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」など、この段階で「内々定」とも取れる有利な扱いを受けて、担当者もパソコンに向かって軽やかにキーをたたいたに違いない。

 報道の当日、愛媛県の中村時広知事は記者会見を開き、この文書が「備忘録」だと認めた。非公式文書のため保管はしていないものの、担当職員による「真正」であることを発表した。一方、昨年7月の衆参予算委員会でこの15年4月2日の愛媛県職員との面会について「記憶をたどる限り、会っていないと思う」と繰り返した柳瀬氏は、今回も重ねて面会を否定した。この二項対立の解は一つしかない。愛媛県職員と、キャリア国家公務員の柳瀬氏のどちらかが、嘘をついているということだ。そして、中村知事は会見で「県の職員は文書をいじる必然性は全くない」と強調した。

 面会内容を忘れまいと記録した文書と、記録のない柳瀬氏の記憶。4月11日の衆院予算委員会集中審議で複数の野党議員から、どちらが正しいのかと追及を受けた安倍首相が放ったのが、冒頭の言葉だ。証拠となる記録をもとにした質問に「証拠の証拠を出せ」と子どもじみた感情を爆発させたようなものか。


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AERA.Dot
2018.4.14 10:42
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