p93〜 検察に拷問された江副浩正---田原

容疑が固まり、身柄を拘束すると、検察の取り調べが始まる。これがひどい。江副の場合を見ても普通の社会で生きてきた人には、とても耐えきれるものではない。
拷問だといってもいい非人道的な取り調べですよね。
江副弁護側の訴えでは、江副に対して、検事は逮捕前から威圧的で陰湿だったと言っている。江副に関する週刊誌の報道を持ち出し、
「女性連れで旅行したことがあるだろう。証拠写真もある」とか、「ずいぶん女性がいるらしいじゃないか」「あちこちのマンションに女性を住まわせている」
「酒池肉林の世界にいたらしいじゃないか」などと、事件に関わりない江副のプライバシー、それも根拠のない女性問題を執拗に問い質し、
江副の人格を否定しようとする。この事実は、担当検事が認めています。

精神的な屈辱と同時に、肉体的にも苦痛を与える。江副が意のままにならないと、担当検事は机を蹴り上げたり、叩いたり、
大声でどなりつけたり、耳元で罵声を浴びせたり、土下座を強要したりした。
江副自身が、肉体的に最も厳しかったと述懐しているのは、壁に向かって立たされるという懲罰だったそうです。
至近距離で壁に向かって立たされ、近づけ、近づけと命令される。鼻と口が壁にくっつく寸前まで近づけさせられて、
「目を開けろ」。目を開けたまま、その状態で、1日中立たされる。しかも耳元へ口をつけられ、
鼓膜が破れるかと思うほどの大声でバカ野郎と怒鳴られる。それが肉体的に本当に苦痛だったと。
このような、実質的に拷問と呼べる違法な取り調べが、宗像主任検事の指示で行われたとされています。
もっとも、僕が宗像に極めて近い検事に確かめたところ、
「そんな暴力的取り調べなどあるわけない。噂がひとり歩きしているだけ。とくに宗像さんは紳士なので、
そんなみっともないことなどするわけはない」と一笑に付していましたけれど。
裁判所でも、弁護側が訴える暴力的取り調べが行われたとは認めていない。被告が肉体的、精神的苦痛を検察から受けることはない、
というのが前提なのですね。
いっぽう弁護人は、「調書なんかいかようにもつくれる。身柄を拘束して長時間責め立てられ、脅される。肉体的、精神的に追い込まれれば、
検事の巧みな誘導についつい乗ってしまう」と反論している。
歴戦のプロである検事と、罵詈雑言、人権蹂躙とはほど遠いエリートの世界で生きてきた経営者では勝負にならないと。

(注)事実、リクルート事件の一審では、江副氏の検事調書は信用できないと裁判官が判断し、検察の主張には矛盾があるということで、
無罪判決が出たが、無罪判決に対してマスコミは一斉に激しい批判を行い裁判官を激しく叩いた結果、
二審以降では逆転有罪になった、という経緯がある。