毎日新聞 2018年3月29日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20180329/ddm/002/010/042000c

 政府が検討中の放送制度改革案は、政権とマスコミの関係を変えかねない。表向きは放送と通信の
垣根をなくして魅力的な番組を作りやすくし、業界を活性化するのが目的だが、政権に批判的な報道への
安倍晋三首相の不満が垣間見える。

 「今はネットでテレビのニュース動画も流れている。同じことをやっているのにテレビだけ規制が
あるのはおかしい」。首相官邸幹部は、首相の放送法4条撤廃の考えをこう代弁する。

 安倍政権下では、4条の「政治的公平」原則をテコに民放がけん制されてきた。2014年衆院選では
自民党が民放とNHKに「要望書」を提出し、選挙報道での「公平中立、公正」を求めた。直前のTBS番組で、
景気への厳しい声が相次ぐ街頭インタビューをスタジオで見た安倍首相が「全然(評価する)声が
反映されていない。おかしい」と反発していた。16年2月には高市早苗総務相(当時)が、
政治的公平性を欠く放送局に電波停止を命じる可能性に言及し、首相が追認した経緯もある。

 一方、首相はネット番組には好意的だ。昨年の衆院選の際は「Abema(アベマ)TV」に約1時間出演。
その後、今年1月31日には楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事の新経済連盟の新年会であいさつ。
ネット出演を振り返り「双方向でいろんな意見があり面白いなと思った。見ている人には地上波と全く同じだ。
法体系が追い付いていない」と語った。内閣府の規制改革推進会議のワーキンググループで放送制度の議論が
始まったのは、その直後の2月7日だった。

 官邸関係者は「今でもテレビの政治的中立なんてあってないようなもの。米国みたいに視聴者が
『このテレビ局はこの政党を支持している』と分かった方がいい」と話す。テレビ局に「公正」を求めるよりも、
ネット番組の影響力を増進する方が望ましいとの政権の方針転換が透けて見える。


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