https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180322-00000017-sasahi-pol

 前川喜平・前文部科学事務次官が愛知県名古屋市の公立中学校で行った授業について、文科省が名古屋市の教育委員会に対し、内容の照会や録音データの提供を求めた問題で、文科省は20日、自民党文部科学部会長の赤池誠章参院議員と同会長代理の池田佳隆衆院議員から調査実施前に問い合わせを受けていたことを認めた。

 文科省が市教委に送った調査メールには、前川氏について「国家公務員の天下り問題で辞職」「いわゆる出会い系バーの店を利用」などと記載。講師決定までの経緯や謝礼の金額、動員の有無など、15もの質問項目を並べた。質問内容の異様さから、問題発覚当初から「官僚の書いた文章ではない」(野党議員)と言われてきたが、予想通り自民党議員の関与が発覚した。ただ、20日に記者会見を開いた赤池氏は、問い合わせの事実は認めたものの「立法府の一員として、(法令が)どう運用されているかを確認するのが我々の仕事」との見解を示し、圧力を否定した。

 その赤池氏は、過去にも文科省に猛烈な抗議を入れたことがある。しかも、批判の対象は人気アニメ「ちびまる子ちゃん」だった。

 赤池氏が問題視したのは、2015年12月に公開された映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』。この作品の制作に文科省は、「国際教育に対する理解・普及を図る」目的で、東宝とタイアップしていた。作品紹介のホームページには馳浩文科相(当時)もメッセージを寄せ、映画を通じて「子供たちが世界に目を向けるきっかけとなることを期待しています」と述べている。

 内容で特に問題を感じる作品ではなさそうだが、赤池氏はポスターに掲載されたキャッチフレーズ「友達に国境はな〜い!」に噛み付いた。赤池氏は同年12月3日の自身のブログで、このポスターを見た瞬間に≪思わず仰け反りそうになりました≫と批判を展開。理由は、≪国際社会とは国家間の国益を巡る戦いの場であり、地球市民、世界市民のコスモポリタンでは通用しない≫からだという。

 そして赤池氏は、前川氏の授業の件と同じように、文科省の担当者にキャッチフレーズを決めた経緯の説明を要求。担当者からは、東宝から複数のキャッチフレーズの提案があったなかで、最終的に文科省が選んだとの説明を受けた。

 納得がいかなかったのか、赤池氏は≪国家意識なき教育行政を執行させられたら、日本という国家はなくなってしま≫うとして、担当者に≪猛省を促しました≫と記している。

 赤池氏は日本会議国会議員懇談会のメンバーで、安倍政権では文部科学政務官に就いた経歴もある。2年以上前の出来事であるが、前川氏の授業への圧力と通じる姿勢に、ネット上では「戦前か!」「国際感覚が欠落している」などの批判が出ている。

 赤池氏の事務所に取材を申し込んだが、「現在、様々な問い合わせがあり、回答をするのが物理的に難しい」とのことだった。事務所から回答があり次第、紹介する。(AERA dot.編集部・西岡千史)