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 ◇参院予算委の集中審議 首相は自身や妻の関与を何度も否定

 森友学園への国有地売却問題を巡る財務省の文書改ざん問題で、19日にあった参院予算委の集中審議。安倍晋三首相は自身や妻昭恵氏の関与を何度も否定した。野党は、文部科学省が前川喜平前事務次官による中学校での授業内容を教育委員会に問い合わせていた問題も併せて追及。官僚のそんたくが疑われる事態が相次ぎ、識者らは「政権の官僚支配の弊害」をみる。【山崎征克、土江洋範、寺田剛】

 「書き換え前の(決裁)文書を見て、私や妻が払い下げや学校の認可に関与した事実はない」「決裁文書の書き換えについて私はまったく指示していない。そもそも決裁文書の存在すら知らない」。集中審議で安倍首相はそう繰り返し、学園と財務省の国有地取引への関与を否定した。

 取引の過程で官僚のそんたくがあったのではないかとの趣旨の質問には「正確にはその本人(官僚)でなければお答えのしようがない」とかわした。野党議員は「財務省に責任を押しつけている」と反発し、第三者委員会による調査も提案された。

 質疑では、退官後に政権批判を重ねる前川氏が名古屋市内の中学校で行った授業内容を、文科省が市教委に問い合わせていた問題も取りあげられた。自民党の衆院議員がこの件で文科省に繰り返し照会していたとされることに質問が及ぶと、首相は「私は事案を承知しておらずお答えのしようがない」と述べるにとどまった。高橋道和・文科省初等中等教育局長は「問い合わせは省の判断」と答弁し、政治家の影響を否定した。

 二つの省の対応に疑問の目が向けられる中、千葉大の新藤宗幸名誉教授(行政学)は「根底には政権へのそんたくという共通の問題がある」と分析する。2014年に設置された内閣人事局が省庁幹部の人事権を掌握していることを要因の一つに挙げ「官僚は政権の意向をうかがいながら萎縮(いしゅく)して働いているのではないか。官僚機構が堕落し、国民にとって不利益となる」と警鐘を鳴らす。

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は森友学園問題を念頭に「時の権力が許容できる記録しか残らないようでは政治の判断が適正かどうかを国民はチェックできず、政治不信につながっていく。(財務省などの問題は)今の政府の運営に無理があることの表れだ」と指摘した。

 教育現場に詳しい尾木直樹・法政大特任教授は「文科省の問題の文書には市教委をどう喝するような表現があり、政治家の文書をそのまま記したのではないか。安倍首相は否定するが、そんたくをされる側に問題の実態は見えにくい」との見方を示す。その上で「官僚が国民ではなく、政治家を向いて仕事をするような問題が続いている」と嘆いた。