毎日新聞2018年3月19日 20時41分
https://mainichi.jp/articles/20180320/k00/00m/040/097000c

「棟上げ式までの工程に与える影響を最小限にする」として
 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する文書改ざん問題で、財務省は19日、新たに決裁に関するメモ1枚を削除していたことを明らかにした。メモには、学園が建設する小学校の「棟上げ式」までの工程に影響が出ないよう、売却額を値引きしてごみ問題を解決する方針を記載。学園側は国との協議で、安倍晋三首相の妻昭恵氏が棟上げ式に訪れることを強調しており、国側が昭恵氏の存在を意識して交渉を急いだ可能性がある。

削除が判明したのは、「森友学園事案に係る今後の対応方針について」と題する文書で、2016年4月4日付。売却時の決裁文書に添付されていたが、削除の時期は分かっていない。19日の参院予算委員会で、太田充理財局長は「週末に作業する中で(削除に)気付いた」と陳謝した。

 メモによると、学園は同年3月11日、国有地から大量のごみが出たと国に連絡。6月の棟上げ式に向けた工期がずれ込んだ場合は損害賠償を請求する▽国がごみを全て撤去するか、撤去費を引いた売却価格を提示する−−などの対応を近畿財務局に要求した。

 財務局は工事への影響を抑えるよう指示した本省の意向を踏まえ、「棟上げ式までの工程に与える影響を最小限にする」として発注に時間がかかる工事はせず、撤去費を事前に引いた価格で売却する方針を記載。国土交通省大阪航空局からも「事案の収束を図りたい」と同様の提案があったとして、売買契約を6月下旬とする日程を示した。

 国有地はこの日程通り、6月20日、約8億円を引いた1億3400万円で学園に売却された。

 メモに昭恵氏の記載はないが、国と学園が16年3月30日に協議した際の音声記録では、学園前理事長の籠池泰典被告(65)=詐欺罪などで起訴=が「棟上げの時に首相夫人が来られる。どうするの、僕の顔は」と発言。小学校の名誉校長だった昭恵氏の存在をちらつかせて対応を迫っていた。

 一方、安倍首相は昭恵氏が棟上げ式に行く予定はなかったと否定している。

■森友学園への国有地売却の経緯
2016年

      3月11日 学園が「新たなごみ」が見つかったと国に連絡

        16日 学園が国にごみ撤去を要求。籠池泰典前理事長は「安倍(昭恵)夫人から『がんばってください』と言われた」と発言

        30日 国と学園が土地売却の方向で協議。籠池前理事長は「棟上げの時に首相夫人が来る」と発言

      4月 4日 近畿財務局が内部文書に「(6月の)棟上げ式までの工程に与える影響を最小限にする」と売却方針を記載

        14日 国がごみ撤去費を約8億円と算定

      6月20日 国が学園に1億3400万円で売却

(籠池前理事長の発言は音声データに基づく。安倍晋三首相は発言内容を否定)